末井昭のダイナマイト人生相談 末井昭

2017.2.27

11人生相談(その11)

 

 みなさま、まだまだ寒い日が続きますね。季節の変わり目は風邪にご用心くださいませ。寒い寒いと思ったら、寒いのは身体ではなく心の方だった……。そんなあなたは、ぜひ末井さんの人生相談室をノックしてみてください。

 さて、ここでお知らせです。「末井昭のダイナマイト人生相談」がこの5月に書籍化されます! 書籍化に当たって、この連載は一旦休止されますので、人生相談の受付は次回(第12回)まででひとまず終了いたします。「本当は末井さんに悩みを相談したいんだけど……」と迷っている方は、下記のリンクから悩みの投稿をお願いします。

 この連載ではみなさまの悩み相談を受け付けています。みなさまの人生のお悩み投稿をお待ちしております。それでは、本日のお悩みのご紹介です。

 

【相談1】

 毎日の口癖が「死ね」と「死にたい」です。些細な出来事ですぐ落ち込んでしまい、生きていてもこんな人生何の価値もないと思って日々を過ごしています。精神的に辛くて、苦しいとき人に悩みを打ち明けても「じゃあ、死ねば」と言われ、かえって人間不審に陥ります。本当に困っているとき、他人に相談しても意味なんてあるのでしょうか。むしろ解決より悩みが深刻になるような気がしてなりません。

(和寿さん/28歳/男性/フリーター)

 

【回答】

AKICHI_COLUMNLOGO_SUEI08-150x240 (1) あなたが悩みを打ち明けている「じゃあ、死ねば」の方は、あなたとどれだけ親しいのかわかりませんが、悩みの相談相手としては不適格です。冗談か本気かわかりませんが、もし本気で「じゃあ、死ねば」と言うような人は、人間じゃないかもしれません。人間じゃないとしたら、あなたが人間不審になる必要はまったくありません
 世の中には人間のような人がいっぱいいますが、人間じゃない動物のような人もたくさん混じっています。その比率は調査できないのでよくわかりませんが、ぼくの勘では半分以上ではないかと思います。ですから、あなたがこれまで関わってきた人や、自分の悩みを打ち明けた人は、すべて人間ではなかった可能性があります。もしそうだとしたら、あなたが人生に何も価値がないと思うのも無理はありません。人生に価値があるのは人間に限ったことですから。
 人間とは、あなたのように生きる苦しみを持っている人のことを言います。人に優しい人のことを言います。あなたの悩みを取り除くことは簡単で、そういう真の人間に出会うことさえできれば、あなたは希望が湧いてくるはずです。あなたが人間である限りそれは可能です。
 ちなみに、あなたの口癖は「死ね」と「死にたい」だそうですが、「死にたい」はともかく「死ね」はやめたほうがいいと思いますよ。あなたが人間でなくなってしまう可能性がありますから。

 

【相談2】

 今年37歳になりますが、親からの「まだ結婚しないのか」プレッシャーに嫌気が差しています。一つ上の姉がいますが、姉はとっくに結婚してもう8歳になる子どもがいます。年末に帰省したときにも家族で「誰かいい人はいないのか?」という話になりました。
 私もかたくなに結婚したくないわけでもなく、いい人がいたら……とは思うのですが、特に出会いもなく(ちなみに、彼氏はもう5年ほどいません)、そのために婚活をする気にもなれません。かと言って「いい人がいなければ一生ひとりでもいい」とも思い切れず、小言を言われるたびに「うっとうしいなぁ……」と思いながらも、そこはかとない焦りを感じてしまいます。
 仕事はやりがいがあるのですが、収入は多くはなく、この先もずっとひとりで生きていけるという自信はありません。そろそろ自分の身の振り方を考えねば、と思いつつ、なんとなく問題を先延ばしにしたまま毎日をやり過ごしています。末井さん、アラフォーの私にアドバイスをお願いします。

(アッコさん/37歳/女性/会社員)

 

【回答】

A06 アラフォーの暗雲に覆われてモヤモヤしている感じがよく伝わってくる相談ですね。女性の場合、30代後半が厄年になっていますが、昔からモヤモヤのタネが尽きない年齢なのかもしれません
 そのモヤモヤの一番大きな原因は、「もう若くはない」ということです。家族から結婚相手がいないことを心配されるのも、ひとりで暮らすことに不安や寂しさを感じるのも、「もう若くはない」からです。
 確かに、多少の個人差はありますが、肉体は年齢とともに老化していきます。しかし、精神も老化してゆくと思わされているのが問題です。精神は、一生子どものままでいることもできるし、少女のままでいることもできます。それなのに、周りから「あなたももっと大人になりなさい」とか「あなた若ぶっていない?」とか言われて、年相応に見える演技をしているうちに、なんとなく精神も年を取っていくのではないでしょうか。肉体と精神は違うのです。精神が肉体に隷属する必要はありません。
 あなたが家族から「誰かいい人はいないのか?」と言われたりするのは、「女性が40近くになっても独身でいるのはおかしい」と世間では思われているからです。そういうのを世間圧と言います。世間圧がうっとうしくて、逆らうのも面倒だと思うのなら、いっそ結婚してみたらいかがでしょうか。あなたに、結婚したい気持ちもある訳ですから。
 言っときますが、結婚は大変ですよ。結婚すればしあわせになれると思い込んでいる人がいますが、恋愛と結婚は違うのです。生まれも育ちも性格も違う他人同士が一緒に生活するわけですから、大変なこともいっぱいあります。気ままなひとり暮らしをしてきた人には、耐えられなくなることもあるかもしれません。そういう覚悟をしておく必要があります。
 しかし、結婚は他者と他者が一体になれるチャンスでもあります。うまくいけば、いつもしあわせを感じながら生活できる可能性もあります。
 さて、言うまでもなく、結婚するためには相手と出会う必要があります。アラフォーの方に聞いたことがあるのですが、これがなかなか難しいようです。ぼくもなかなかいい方法を思い付かないのですが、新しい趣味を持つとか、勉強を始めるとか、スポーツをやってみるとか、いままでとは違ったことをやってみるのはいかがでしょうか。趣味のサークルとか、ワークショップとかセミナーとかに通ってみると、新しい出会いがあるかもしれません。
 また、思い切ってファッションをガラッと替えてみるのもいいかもしれません。いままであなたに関心がなかった人から声がかかるかもしれません。
 いずれにしても、結婚がすべてではないのですから、気楽に挑戦してみたらいかがでしょう

 

【相談3】

 こんにちわ。私は40歳の団体職員です。団体といっても事務所は3人だけで、吹けば飛ぶような小さなところです。勤めて10年程になります。事務所は赤字続きで潰れそうだし、いろいろ問題が山積しているのですが、67歳の天下り上司が仕事を私に任せっきりで頼りにならなくて、余計に先行きを不安に思ってしまいます。同僚は私と同じ時期に入った63歳の女性で、もうすぐ定年です。
 なんだか私が一人で事務所の問題を背負っている気がしてきて、毎日イライラ、精神が不安定になってきました。昨晩、ふと、辞めてしまおう、と思いました。私が辞めたら、残されたふたりではどうしていいか全く分からないでしょう。でも、それを考えると、ふたりを見捨てるようで辞めてはいけないような気もします。潰れかけた会社を見離すことと、高齢者を見捨てることに後ろ暗さを感じていますが、他にやりたい仕事もあります。どうすればいいと思いますか?

(まる子さん/40歳/女性/団体職員)

 

【回答】

 高齢者を見捨てているとは思いません。あなたが優しい心を持っているから、そう感じるのでしょうが、ボランティアでやっている訳ではなく、あなたの将来がかかっている仕事です。どう考えても泥舟にしか思えない職場なんですから、沈む前に早く脱出したほうがいいでしょう。
 でもまあ、いきなり辞めてしまうとあなたに罪悪感が残るかもしれないので、まずは天下りのあなたの上司にやる気を起こさせることです。67歳といえば、ぼくより1つ若いですよ。まだ、若干はエネルギーが残っているはずです。あなたが頑張るから、その67歳はわずかなエネルギーを温存しようとしているようですが、そのエネルギーを使い果たすぐらいの覚悟を持ったら、新たにエネルギーが湧いてくるものです。なんとかなるかもしれませんよ。
 それでだめなら、辞めてしまってもかまわないでしょう。会社が潰れそうなのは、あなたのせいではないので、罪の意識を持つ必要はありません。

 

【相談4】

 編集プロダクションから出版社に転職して3年目になります。前職では出版社から頼まれた仕事を日々こなしていましたが、今では自分で企画を立ち上げ、ある程度好きな本を作らせてもらえるのでやり甲斐はあります。しかし出す本出す本、まったくヒットしません。定番の企画、少し奇抜な企画、試行錯誤してみるものの、結果に結びつきません。そのうちに自分の感覚は世間とズレているのではないか、今後もずっと売れない本しか作れないのではないか……と考えるようになり、毎日憂鬱です。
 同じ環境にありながら、同僚や先輩方はヒット作を手がけています。みんな優しく励ましてくれますが、それが逆に心苦しく、裏では自分を馬鹿にしているんだろう、などと邪推してしまいます。かつて末井さんのブログで読んだ「編集者の心得」も常に頭に置いているのですが……。わたしは編集者に向いていないのでしょうか。助言をお願いします。

(役立たずさん/31歳/女性/編集者)

 

【回答】

A05 編集プロダクション(以下「編プロ」)の仕事は、出版社から依頼されて本を作るわけですから、基本的には受け身です。あなたは、編プロを辞めて3年目になるそうですが、まだ編プロにいるときと同じ気持ちでいるのではないですか。あるいは、編プロにいるときに培った感覚が染み付いているのかもしれません。
 本を作るとき、内容よりも先に、売れる本はどういう本だろうか、奇抜な企画はどういうものだろうか、というようなことを考えてはいけません。一番大事なのは、あなた自身がどうしても読みたいと思う本をイメージすることです。その企画を実現するために、売れるか売れないかを考えることは当然ですが、先にそれを考えてしまうと、あなたのイメージが広がらなくなります。
 出版はギャンブルみたいなところがあって、絶対売れると思っていてもまったく売れないことが結構あります。だったら自分が作りたい本を作ったほうが、たとえ売れなくても落ち込まなくて済みます
 ぼくも売れている本を真似して本を作ったことがありますが、まったく売れませんでした。自分が作りたい本でもないのに、売れているからという理由で作った本が売れなかったとき、ものすごい自己嫌悪に陥ります。それ以来、そういう作り方はやめました。
 話は変わりますが、ぼくが勤めていた出版社では、ぼくが入ったころは企画会議というものがありませんでした。企画書を作って社長に見せるだけでした。社長が「こんなもの売れないよ」と言ったら、「何を言ってるんですか、絶対売れますよ」と言うと、「じゃあやってみようか」となるのでした。『写真時代』も『パチンコ必勝ガイド』も、そうやってできました。
 会社が大きくなってくると、社長や編集部、営業部、制作部、広告部の人たちが集まって、企画会議をやるようになりました(ぼくもそのメンバーのひとりでした)。新しく出す本や雑誌は、すべて企画会議を通さないと出せなくなったのですが、その席で常に聞かれることは、類似の出版物があるかどうかということです。類似のものがあれば営業がその売れ行きを調べ、販売成績が悪いとその企画は通りません。また、類似のものがない場合でもたいてい落ちます。その理由は、売れるか売れないかの判断ができないからです。あるいは、売れないから過去に誰もそういう本は出さなかったと判断するわけです。
 売れない出版物が多くなったせいもありますが、いつの間にかそういうリスク回避のシステムができていました。営業が主導権を持つとそうなってしまうのです。
 そういう会議をしていると、オリジナリティのある本や雑誌は作れません。本が売れない時代とか言っていますが、リスク回避ばかり考える出版社が多くなったことも、本が売れない要因ではないかと思います。なぜかというと、売れている本の2番煎じ、3番煎じ、果ては10番煎じ、20番煎じみたいな本ばかりになってしまうからです。
 出版社で企画会議がないところはないと思いますが、会議で言われることなど無視するぐらいの、自信と心意気が編集者に欲しいと思います。そのためには、自分がどうしても出したい本のイメージを持つことです。
 あなたのように、出す本出す本まったく売れないと、気持ちが萎縮してしまいますます売れない本しか作れなくなります。その連鎖を断ち切るためには、自分が作りたい本とは何かということを、常に頭に置いておくことです。どうしてもこの本をつくりたいと思えば、気持ちの入れ方も変わってきて、いままで出せなかったパワーが出てきます。その結果、売れるかどうかはわかりませんが、売れる可能性は前より出てくると思います。
 あなたは、みんなが励ましてくれるいい環境にいるわけですから、いい意味でのわがままな編集者になって欲しいと思います(ちなみに、ぼくが書いた「編集者の心得」は、売れる本作りにはまったく役に立ちません。念のため)。

 

 

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この連載は月1更新でお届けします。
次回2017年3月27日(月
)掲載