立ち読みコーナー
▲江沢民政権のゆくえ(荒井利明 著)
▲ニューヨーク流 たった5人の「大きな会社」(神谷秀樹 著)

書籍写真 江沢民政権のゆくえ
荒井利明 著
本体価格 1,600円
IV 江沢民、後継者となる より

 胡耀邦と趙紫陽を失脚させたトウ小平は、新たな後継者を選ばねばならなくなった。トウ小平が戒厳部隊の前に姿を見せてから二週間後の一九八九年六月二十三日、党中央委員会総会(第十三期四中総会)が開かれた。翌二十四日に閉幕したこの総会で、まず趙紫陽の総書記解任が正式に決定された。総会のコミュニケは趙紫陽に関して、「党と国家の生死存亡にかかわる重大なときに、動乱を支持し、党を分裂させる誤りを犯し、動乱の形成と発展に対して逃れられない責任を負っている」と指摘した。趙紫陽は総書記からひら党員にされ、さらに引き続き審査を受けることになった。
 趙紫陽はこの総会で弁明し、「広範な学生の改革を求め、腐敗に反対する熱情は尊いものである。政治体制改革は経済体制改革と同時に進めるべきである。異なる意見の提出は、党の分裂を意味しない」などと主張した。自己の正しさを強調したが、無駄だった。失脚に際して、むやみに自己批判して見せた胡耀邦とは、対照的な身の処し方だった。
 後任の党総書記には、トウ小平の指名で、党政治局員でしかなかった江沢民が選ばれた。江沢民は就任のあいさつで、次のように述べた。「トウ小平同志が提出し、我々が実行すべき改革・開放は、社会主義の道を堅持し、人民民主専制を堅持し、共産党の指導を堅持し、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想を堅持した改革・開放である。プルジョア自由化を行う者たちが主張するのは、西側資本主義の実現を目的とし、人民民主専制を放棄し、共産党の指導を取り消し、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想に反した"改革・開放"である。彼らの"改革・開放"の中心は、資本主義化であり、これは党と人民の絶対に許すことのできないことである」と。江沢民はここで、改革・開放には二種類あり、趙紫陽がやろうとしたのは、資本主義的改革・開放であると非難したのである。
 江沢民の総書記就任は、政治局常務委員の李鵬(首相)らを飛び越しての、二階級特進だった。胡耀邦と趙紫陽という二枚のカードを使いはたしたトウ小平には、もはや手持ちのカードはなかった。トウ小平にとって、やむを得ぬ選択だった。
※トウは登とおおざとを合わせた文字。
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