間取りと妄想 大竹昭子

2016.12.21

12月を吸う

 

 

plan12 (1)

間取り原案:大竹昭子 イラスト:たけなみゆうこ

 

 

 エンジンのかかる音がして、ダン! と鳴った。ダン、ダン、ダダダダダッーと速度が速まり、振動がそれにつづいた。土曜の朝の静けさはたちまち雲散霧消し、室内の空気は音そのものに入れ替わった。
 少し前から長いこと空地だった隣の敷地で工事がおこなわれている。仕事を失ったばかりで家にいることが多く、一日中この音とつきあわされている。音ははじまったかと思うとふいに止まるので落ち着かず、プチ鬱状態の心がますます凝り固まっていく。
 ダイニングキッチンの窓を開けると、その現場が見える。敷地全体をコンクリートの台座が覆い、その上に小型のパワーショベルが載っている。アームの先にはショベルではなく鏨が付いていて、それを台座に突き立てコンクリートを割っていくのである。台座の下は空洞で、割れた口からは鉄筋が突き出していた。
 昨年まで、その上には戸建ての住宅が載っていた。玄関窓にステンドグラスがあしらわれたちょっとしゃれた造りの家で、道路からだと一階建てのようだが、実際は二階建てで、いまは空洞になっている下のほうの部屋が、この窓からよく見えたのである。
 斜面に家を建てるやり方にはいろいろある。うちのマンションのように崖を垂直に切り落として下の地面に基礎を打つ方法がひとつ。高い建物を建てるにはそれでいいが、二階建てくらいだとどうするかというと、斜面をL字型に掘削して部屋を埋め込んだり、台座を崖に張り出して載せたりする。隣の家は後者で、その台座を支えるコンクリートの足場が、土留めされてない斜面にむき出して立っているのが、この窓から一目瞭然だった。まわりには雑草がしょぼしょぼと生えてなんだかなげやりな風景で、この足がずるっと滑って上の台座が傾き、家もろとも落ちてくる、なんていうシーンが、窓を見ているとつい想像されてくるのだった。でも、こんなにたくさんコンクリートを投入していたのなら、構造計算はちゃんとしていたのだろう。
 台座は結構広い。四十平米はあるかもしれない。それをすべて破壊し尽くそうという勢いでパワーショベルはアームを振り上げる。その怒った蟹を思わせるしぐさには鬼気迫るものがあり、薄くなった心の殻が破られそうで動きの悪いアルミサッシを引っ張った。
 磨りガラスの窓が閉じると、室内が少し暗くなった。
 間取りは2LDKで、部屋が縦に三室連なり、うなぎの寝床のようだ。ダイニングのほかは壁側に窓がないので一層うなぎっぽく見える。それでも、ベランダの前が谷で視界が開けているから閉塞感はなく、とくに今日みたいな晴天の日などは真っ直ぐ入ってくる光にすがりたいような気持ちになった。
 見つめているうちに、牧村サトルがこの部屋を訪れた日のことを思い出した。夜だったから太陽の光ではなくて月の光だったけれど、太陽よりももっと一途な力強いものが感じられた。