「お洒落」考 江弘毅

2020.5.29

12なんで気づかなかった ラコステのサイズ感。

 



 前回は「ポロシャツは虎でも鷲でも犬でもなくて、やっぱりワニのマーク」というふうに終わったのだが、515日に傘のワンポイントマークのアーノルド・パーマー(これは懐かしい)をやっていたレナウンが倒産したり、また服好きの旧い友人からのFacebookの書き込みで、「せやな、なっつかしな、と拝読しました。文中にもある反対向きのワニの会社に勤めていたことがあります。平日は怒られるけど、休みの日には、お洒落なやつはみなラコステ着てましたわ」とあって、そうそうやっぱりポロはラコステや、と確信した次第。

  ちなみにその「反対向きのワニ」はクロコダイルで、70年代は大阪方面ではどちらかというと心情的ヤンキー系若者に人気だった。今は全然違うテイストになっているけど、まあ半世紀生きているもう一つのワニだ。
https://www.crocodile.co.jp/page/fathersday 

  わたしの中学生からのラコステのポロシャツ史については、特筆すべきものがある。それについて書こう。
 20年ぐらい前、2000年ごろだと記憶しているのだが、30枚ぐらい持っていたポロを処分しだした。少し前にパリやニース、ミラノやナポリに行ったときに買ったり人に頼んで買ってきてもらったりしたものも含め、「これ、違かったなあ」と着なくなったり人にあげたりした。

  バブルの頃のアルマーニやヴェリー・ウオモ、ビブロスとかの服を覚えているだろうか。
 肩パッドてんこ盛りで空飛ぶような大きなラペルが着いているジャケットや、加えて脚が2本ぐらい入る太さのパンツのスーツ。
「これはもうダメやろ」「なんでこんな変なデザイン買ったんかなあ」と苦笑しながら依然としてクロゼットのなかにあるのを処分したのが、ラコステのポロより56年ほど早かったが、本質的というか決定的というか、今まで着ていたポロシャツについて「サイズ感の間違い」を感じたのだ。

  考えてみればラコステにしろラルフローレンにしろ、同じメーカーのポロシャツは選ぶ要素は単純で、サイズと色だけである。
 けれども「なんでずっと気づかなかったのかなあ」というぐらいオーバーサイズを着ていたのだ。もともと腹が出ているから胸や胴回りは幸いイケる。が、着丈の長さが長すぎる。「これはあかんなあ」である。もう絶対着て外出できない。

  こういうことは本格的にラコステを着だした20代の時に気づくべしだった。けれども日本のセレクトショップもそうだったが、フランスやイタリアに行った際、ラコステのブティックで店員さんにサイズの「4」、ときには「5」を薦められて、何の疑問もなく着ていたのである。

上から90年代初めのもの、まだMADE IN FRANCEと書いてある2000年頃のもの、5〜6年ぐらい前のもの


 そのうち後ろ首のところのネームタグのデザインが変わったり、MAID IN FRANCEの表記がなくなったり、そういうブランドっぽいことには「あれ、変わったなあ」と気を遣っていたが、サイズに関しては「4」より「3」のほうがしっくりくるな、ぐらいに思ってるだけだった。
 さきほどのバブル期のイタもんの一連がそうだが、ブランドものの服を間違って着てしまうひとつの盲点だ。ラコステという「ブランドそのもの」にはこだわっているが、肝心のカッコよく着ることへの無頓着さが恥ずかしい。


 そのラコステだが、10年ぐらい前に新しい「LVE」ラインを出した。
 初めて見たのは「ラコステ三宮店」で、奥の方の定番のポロシャツコーナーに並ぶ見慣れた定番のグリーンのワニ(L1212)ではなく、表の方にぽんぽんという感じで置かれていた。

  Sale中だった。「30%オフ、2枚買えばさらに10%オフ」みたいなバナナリパブリックがやってそうなアメリカンな値引きだった。
 わたしはこういうのには弱い(と、人にも再三、言われている)。

  黄色と明るい青とオレンジと赤の中間ぐらいの3色があった。素材は鹿の子だが、定番に比べてちょっとなめらかな感じだ。
「お、これは? 新作か」と手にとってまず目に入ったのが一回り、いや二回り大きなワニのマーク。
「でかワニ、それも白ワニやなあ(昔のIZODの青ワニを思い出す)。いや、そうか、ラルフローレンもでかマーク流行ってるもんなあ」と、Saleで投げ売りされる事情を一気に把握した。

  日本のラコステ・ファンは、どうしてもラコステはさっきの「奥の方の棚に丁寧に並べられている、昔からの定番の、緑ワニ(L1212)」でないとラコステでない、と思っているのだ。「無類のブランド好き(とSale好き)」のわたしは、それが良くわかる。

 「ポロはラコステ」にこだわってきたファンにとって、「でかワニ」「色ワニ」の類いは、「パッチもん」に見える、あるいは正統ではないと思われていたのではないだろうか。
 けれどもパチもんやパロディに関して寛容なわたしは、逆に「おもろいなあ。新しいなあ」と思った。

  早速、店員さんに「定番のよりスリムですよ。4ぐらいですかね」と広げて肩に当てられ、薦められるまま「4」を試着した。
「おっ、これはむっちゃエエなあ」
 その時に「おっ、このサイズのこのボリューム感、いい感じ」と思った。胸回りもぴったりで、何よりも着丈がジーンズのベルトループのちょっと下の理想的な感じだ。
 今さらながらだったが、ポロシャツはTシャツと同じく、わたしの場合サイズもデザインもだいたい「L」が基準で、パッと広げて見て「こんなもんかなあ」で買っていた。ラコステのポロをこういうふうにしてきちっと試着して、鏡で見るのは久しぶりだった。

  黄色と青の42枚買いして喜び勇んで帰る。
 ラコステに関しては、SMLのサイズではなく、2345というサイズで、自分の場合は45である。ポロシャツばかりの引き出しを開けてあれこれ出してきて、試着してバッチリだった「でかい白ワニ」の「LVE」を比べた。

  定番のより、襟が少しだけ短いな。ちょうちん袖は30%くらい短くて細い。L1212と同じ2つボタンだが、前タテのステッチがなく、それで余計に細身な雰囲気が出ている。
 タグを見るとメイドインチャイナで、コットン96%、ポリウレタンが4%、襟と袖のリブ部分がコットン100%。
 なるほどなあ。

 引き出しのなかのラコステは、ほとんどサイズ4または5だったが、黄色と白の2枚だけサイズ3があって(前回のFacebookのスクショで紹介した)、引っぱり出して新しい「LVE」と重ね合わせて比べるとほぼ同じサイズだった(新しいラインの「LVE」は1サイズ小さいのだ)。
 その時に、30年ぐらいかけて増やしていったラコステ・ポロのデカ過ぎるサイズ感を確認する(わざわざ古いのを着て比べてみた)のと同時に、ラコステのポロシャツについて、なんだか「学習した」気分になった。


昨年(2019)に日本の正規ブティックで買ったL!VE。あれ、タグが変わってるぞ。ワニはそれまでよりちょっと小さめな感じで、このあたりが面白い。サイズ表記はMになっている


 そこからどんどんLVE4サイズを買っていって、代わりに今まで着ていた定番のラコステの45サイズを折に触れて処分していった。ものすごいセコい話だが、メルカリで程度のいいのを5枚ほど出して売った(2500円ぐらいでソッコー売れた)。

 今現在のラコステは、定番のL1212は、2345というサイズ表記だが、日本の正規ブティックで並ぶLVEは、SMLの表記になっている。
 なんでそうなるのかようわからん。
 ただポロシャツやTシャツを買う際は、「大事なのはサイズ感」と思うようになって、「だいたいLやろ」というような横着な選び方で買うことはやめた。
(もっと早よ気づいてればよかったのに、とつくづく思う)

(第12回・了)

次回、2020年6月12日(金)掲載