「お洒落」考 江弘毅

2020.3.4

06パンツの丈は大丈夫、ですか?(実践篇)

 

 ジーンズの丈。フィッティングデー@Cinq essentiel Kobe
 リゾルト(RESOLUTE)の「はやっさん」(デザイナー林芳亨さんのこと)が直接、フィッティングをしてくれるフェアで、神戸は三宮の「サンクエッセンシャル」に行ってきた。去年の秋から2回目の参加だ。
 今回はこの連載の取材も兼ねてだが、リゾルト創立10周年記念のホワイトジーンズがいち早く見られるので、それもあって「これはいっとかなあかん」と、チャリンコに乗って行ってきた。

2011年からずっとフィッティング・フェアをやっている神戸のセレクト・ショップの「サンクエッセンシャル」。買ったお客さんが表のショー・ウインドウでデザイナーの林芳亨さんと記念撮影。気持ちはよくわかる

10周年記念でリリースされるホワイトジーンズもこの通りのウエスト×レングスのラインナップ


 わたしは、はやっさんがデザインするジーンズつまりリゾルトとそれ以前のドゥニームをここ30年穿いている。すごく微妙な長さ違いの何種類かをその時のコーディネイト等々でうまく穿き分けている。
 リゾルトのすごいところは、メインの710(テーパードストレート)で、例えばウエスト32でレングスがL28368サイズ用意されていることだ。ウエストはW2640なので都合86パターン。

ウエストのみならずレングス違いを試着して、はやっさんにこういうふうにやってもらえるのが「納得いく選び方」だ


 はやっさんによると、すべてパターンを変えているというからこれはさらにすごい。
 なんというか「アパレル」ではなく「ジーパン専業」。クルマの世界ではF1みたいなもんだ。

  今やイタリアやフランスでも人気のリゾルト、これははやっさんが大卒後入社したジーンズメーカーのUFO、大資本のワールドの一部門だったドゥニームを経て、20104月にリゾルト設立に至る約40年のジーンズのリリース経験から、デザイナー自身「うちのジーパンはこうですよ」と客に説明するフィッティング・フェアが、「お客さんが直接話できるから楽しいはず」とのことでやってきた。
 神戸の「サンクエッセンシャル」は一番早く、20119月からこのフェアをやってる。


「ジーンズはファッション・アイテムではなくカメラみたいな道具やと思う」と言う、はやっさんのジーパンは、ジャストフィットが身上で丈さえ間違わなかったら、かなりカッコよく着こなせる。
 そして34年穿き倒して次に同じものを買えるというところが良いのだ。有難い、といってもいい。
 わたしは前回ふれたKYOTO EDITIONを含め、それこそドゥニームを20年以上穿いてきたが、ポケットが潰れて太ももが割れて……というところまでくると修理に出す。

  自分の身体にまるで皮膚の延長のようにフィットして、また色落ち具合が「これこれ、これがオレのジーパン。たまらんなあ」と自画自賛気味に思ったりするが、やっぱり2回目のリペアとなると、「前のボタンホールもベルトループも修理やなあ。なにぃ、5か所で1万円か。これはもうあかん」となって、どうしようかと悩む。

  そういうときに同じジーパンがあるというのはものすごく有難くて、なるほど「道具か」と思ったりする。

  リゾルト、エヴィス、フルカウント、ウェアハウス。90年代からのヴィンテージ・ジーンズのトレンドを牽引してきたのがこれら大阪のメーカーで、すべて50年代あたりのLevi’s501を再現しようとこだわり抜き、「変わらないまま進化して」30年後の今に至っているのが面白い。

  アパレルが不況といわれ、またユニクロ的大量生産による「安服」があたり前になってきている現在、どのメーカーのジーンズも2万円前後と高い。
 けれども「ここ5年毎年35%伸び続けている」(「フルカウント」辻田社長談)というのは、やはりひたすらトレンドを追いまくる「アパレル」とはまた違ったカテゴリーなのだろう。

これは30年以上穿いているドゥニームXX。ベルトループやポケットのくたびれ具合を見て「修理に出そうかな」と思ったが、5〜6年前にほぼ同じ形である(生地は違うが)サラのリゾルト711を買った


 店に着くなり、はやっさんに「こークン712穿いてみ」と言われ早速、試着してみる。わたしのウエストは33インチ。
 リゾルトは710とちょっと太めの711を穿いているのだが、ジップフライの712は細身の710と似ている。が、股上浅め、太ももの部分が微妙に余裕を持たせてある。
 そのぶん膝下から裾にかけてのテーパードが、「しゅっ」とした感じに見える(洗ったときに真っ直ぐ吊して干すとそれがよく分かる)。

さっそくL29を穿いてみる。「こんな感じやなあ」と、はやっさんがちょっとだけロールアップしてみてくれる

 

 さてと、試着したレングスはL2931
 どちらも「ぴったしやんけ」だったが、奥さんのsyuジーンズのデザイナー修子さんの「こークン、31の方がきれいで」とのひとことでそちらに決定。

L29を穿いて「これ、いっときますわ」となりかけた。ピンクのギンガムチェックのシャツは20年ぐらい着てる半袖のダンヒル。靴はパラブーツのミカエル。これも20年以上履いてソールを修理している

L31を穿いた。はやっさんは「29も31もどっちもいけるけど、まあ好き好きやなあ」と言う。うーん。で、微妙な丈の違いを見比べてほしい。

 

 はやっさんのリゾルト712
 710711も持ってるが、この712の特徴は、
710をほんのちょっと太ももに余裕持たせて、膝から下はテーパード。
②ジップフライ。
③サンフォライズド、つまり防縮加工された生地。
④生地の毛羽を焼いている。手触りはつるっとした感じ。
 書いて説明するとこのあたりだが、実際穿いてみると、「これ、ジャケットとかカッターシャツとかのかちっとした格好に、710よりも合うちゃうか」「おっ、新品の状態がええなあ」とか、いろいろ実感が湧く(そこが大事だ)。



 前述の通り、はやっさんにフィッティングしてもらった結果(修子さんのアドバイスもあって)、W33 L31をチョイスした。

  持って帰って、新品状態のものを水洗い洗濯。脱水したのをコインランドリーへ持って行ってガスの乾燥機にかける(30分)。
 丈も含め、ちょっとだけ、んーと、5%未満の縮みだろうか。さすがサンフォライズ、という感じ。
 さあ心機一転、サラで行こう。なんだか大工のカンナとか板前のチビてきた刺身庖丁とか、職人が同じ道具の新品を使い始める感じかなあ。

ポケットの袋布にサインしてくれる。うれしいな

しっかし、この人の710、このセルビッジのアタリと裾のパッカリングの見事なこと。なんか茶道具みたいやね、これ

 

(第6回・了)

次回、2020年3月18日(水)掲載