2000万円足りない人の、とりあえずの500万円 佐藤治彦

2019.12.8

02ストレスを溜めると、お金が貯まりません

 

 こんにちは。12月に入って東京も寒くなりました。お元気ですか?
 この連載は将来の老後のことも大変だけれど、いま目の前の生活に余裕がなく貯金なんかできない人の生活を少しでも良くするためにはどうすればいいのかを考えるものです。考えてそれぞれの答えを出していくものです。そのための質問を毎月一つ皆さんにしていきます。

 それでは最初の質問です。
Q1  
毎日の生活でストレスを感じることはありますか? そのストレスを解消するために、あなたはどうしていますか?

 お金が貯まる人とそうでない人の差はどこにあるでしょうか? それは、収入のうちで支出を賄えているかどうかということです。20万円の手取りがある人が15万円で生活をすることができれば5万円残ります。100万円の収入がある人でも120万円も使ってしまえば20万円足りません。
 当たり前ですね。
 一般的にファイナンシャルプランナーさんや変テコな経済ジャーナリストさんの家計診断では、この支出を減らしてください、とか食費から光熱費まで1割カットしてください。平均と比べると光熱費が多すぎます。減らしてください。そういうアドバイスをする人が大勢います。
 しかし、それぞれの人たちにはそれぞれの事情があり、生活の背景があります。ですから一律にカットとか、食費を減らしてくださいとかいうのは無理があると思うのです。例えば、3人家族の食費の平均は一月5万9000円(酒、外食を除く)くらいだそうです。では、ある家庭で8万円使っているから、それでは使いすぎだということができるでしょうか? 例えば、夫がスポーツ選手、子どもも野球部の高校生となると、栄養のある食事をたくさん食べるのが当たり前です。8万円でもキツキツで少なすぎるかもしれません。反対に50代の夫婦と80歳の母との同居暮らしで5万円ならどうでしょう? もうあまり食欲もありません。夫婦は共稼ぎでお昼は会社が食事を提供してくれます。家では簡単なものしか食べません。それなら4万円でも十分かもしれませんね。と、いうようにそれぞれの背景が違いますから、なんとも言えないのです。平均から自分の生活を考えても仕方がないと思うのです。
 それぞれの人生に、それぞれの生活があるからです。もちろん、今のままでで生活をしていても、お金は貯まりません。生活の見直しは必要です。
 この秋、私は本当に自堕落な生活をしてしまいました。いろんなことに追われて、イライラするばかりの毎日で大変でした。そんな時に私がしてしまうことはつまみ食いです。餃子3個だけ、おにぎり1つだけ、チョコレート半分だけ、アイスクリーム半分だけ。3食きちんと食べているだけでなく、イライラして、そういうつまみ食いをしてしまうのです。そして、全てに「〜だけ」をつけてます。イライラして食べるつまみ食いは良くないとわかっていますから、半分に我慢しているという理屈です。半分だけならいいだろうというわけです。半分だけを一日6回やったら、それこそ、半分だけの理屈は通用しないですね。こうして、体重がどんどん増えてしまいました。
 デニムのパンツを履いてる時に、あれれ? と思ってしまったのです。
 ホームドクターのI先生から世田谷区の特定健診はいいから受けなさいと去年から言われていたのですが、なんだかんだと理由をつけて逃げてきたのですが、軽く諌められて予約を入れました。デニムのパンツの自覚と検診を受けるとなって、1年半ぶりに体重計に乗ってびっくりしたのです。
 何キロだったかは恥ずかしいので書きませんが、これは大変なことになってると思ったわけです。体重は自然に増えることはありません。ちゃんとそこには理由があります。半分だけが積み重なった結果です。つまり、摂取カロリーが必要量より多すぎるからなのです。
 そして、楽しい忘年会シーズンがもうすぐ始まる。体重が増える時期です。ですから、それまでに、なんとかしないといけないなと、食生活の改善をすることにしました。
 必要な栄養素は取りながらカロリーは減らす。断食できればいいのでしょうが無理ですから、ローカロリーのものを食べるように変える。美味しくないものだと続かないから、美味しくて、ローカロリーのものに食生活を移しました。
 そして、体重計に毎日3回は乗ることをしました。自分の現状から目をそらさずに向き合う。そして、続けられる対策を立てて実行する。
 そうやって、努力というより工夫した毎日を過ごしていくと、数日すると少しづつ結果が見えてくるものなんですね。体重が減る。すると体重計に乗るのも楽しくなります。結果がプラスになると励みになってさらに続けられるというわけです。こうして3週間くらい過ぎました。目標の減量にはまだ半分なのですが、周りの人に痩せたねなんて言われるくらいになりました。
 考えてみると、イライラしてお金を払って買った食べ物をストレス解消のために食べて太ってしまう。こんな無駄なことは無くした方がいいに決まってます。
 暑い部屋のエアコンを電気代がもったいないと切る。部屋の電気代がもったいないからと60ワットの電灯を40ワットにする。そういう必要なものの支出までカットする節約は出来るだけしないというのが私の考え方です。
 現代に生きる私たちは、いろんなストレス抱えて生きています。そのストレスは抱え込むのではなく解消しなくちゃやってられません。そのためにお金も使います。しかし、このお金はネガティブな支出のことが多い。私の場合なら、仕事でイライラして、そのイライラを解消するために食べ物に逃げる。毎日の生活に不必要なものを何回も食べる。そのためにお金も出て行けば、太り過ぎて健康にも良くない。放っておくのはいけないのです。
 ストレスにまつわる支出。これは現代に生きる私たちには避けて通れないものなのかもしれませんが、工夫できるのであればしたいものです。
 女性の場合なら、買い物はストレス解消だとよく聞きます。必要なものであればいいのですが、必要でないものを買うのは馬鹿げています。ミュージカルにはまっている女性を知ってます。大劇場の有名なものから、2・5次元と言われるものまでいろんな芝居を観に行かれ、趣味だと言います。しかし、一月のうちに同じものを5回も6回も見にいくようになったら、それはちょっと考えものです。ダブルキャスト、トリプルキャストだし、その組み合わせが面白くてという理由をつけたり、劇場にいるときだけが幸せなのとなると、いや普段の生活が楽しくなるような工夫をしてくださいと申し上げたくなる。
 男の場合なら、風俗やギャンブル、キャバクラなどの飲み屋通いはストレス解消目的の究極です。最近はスマホのゲームにのめり込む人も多く、この秋、WHOが病気と認定した、スマホなどのゲーム依存症もそうですね。
 まあ、これらも男だけじゃないですね。ただ、男性に多いのが、集めるということです。コレクションのことです。ミニカーやフィギュア。一つは飾っておくもの、一つは閉まっておくものと同じものを二つ買うことさえもあります。集めること、手に入れることで気持ちのバランスを取るのでしょうが、閉まっておくものまで買うとなると話は別です。
 一方でストレス解消のためにスポーツをする人がいます。毎日ランニングをする。週末はテニスに汗を流す。フットサルの試合に出る。もちろんお金もかかるでしょうが、内容も支出する金額も健全じゃないでしょうか。読書や音楽、絵を描いたりなど、ストレス解消と趣味を兼ねたことをしている人は山ほどいます。
 現代に生きる私たちは、ストレス解消のために一体どのくらいのお金を支出しているのでしょうか? それは、本当に必要なことなのでしょうか? もっと賢いストレス解消の方法があるのではないでしょうか? お金が貯まる生活に変えていくために考えて頂きたいことです。

佐藤からの提案 
 現代に生きる私たちにとって、ストレスとその解消法はとても切実な問題です。自分にはどんなストレスがあって、そのためにどんな歪みがあるのかということを真正面から考えて見ませんか。可能なら書き出してみるのもいいかもしれません。
 そして、いまのストレス解消法は果たしてベストなのか。考えて見ましょう。大切なお金は、自分が生きていくための、そして楽しみや幸せのために使うべきであって、ストレスのために支出するのは出来るだけ減らしたいものです。そのため使っているお金が多すぎではありませんか?

***

連載を開始するにあたって、メールを募集したところ幾つかのメールを頂きました。今回は二つ紹介させていただきます。なお一部割愛させていただいているところもあります。

メール1
 はじめまして。 2000万円足りない人の、とりあえずの500万円』第1回目拝読しました。 これからの連載が楽しみで、メールを送らせていただきました。 
 私は現在、約300万円の借金があります。 
 友人だった占い師を信じてしまい、2年前に負債を抱えてしまいました。 
 それからしばらくは仕事も体調も安定せず、返してはまた借りるを繰り返し、返済できない月もありましたが、最近やっと安心できる定職に就いて生活が安定し、"2年前は信じる人をまちがえた"という自覚も持ち、少しずつ返済しています。 
 今回始まった連載はこんな私の背中にもそっと手を添えてくださるような温かさを感じました。 辛かった数々のことを理解してくださっているような気がして、砂漠の中でオアシスに辿り着いた感じがして涙が出そうです。 
 学生時代から考えても散在気味で貯金ができない傾向にあるため、これから毎月勉強させていただきます。 (匿名希望Nさん、30代女性)

佐藤から。
 Nさんこんにちは。読んでくださってありがとう。今回の文章はNさんのことをすごく意識して書いてみました。少しは参考になったでしょうか?
 友だちはとても大切です。私はひとりで生きていくという人もいるようですが、私にはできません。人との繋がりが人生の醍醐味の一つだとも思ってるくらいです。いただいたNさんの文章は前向きでポジディブでいいなと思いました。こうして、自分の生活に向きあってみる。それも、文章を書くことですごくはっきりして、その問題点はきっとNさん自身もわかっておられると思います。
 ただ一つ心配なことがあります、それは"2年前は信じる人をまちがえた"というところです。
 オレオレ詐欺が、一度騙して困っている人のリストを集めて、もう一度騙しにいき詐欺に成功するということがよくあるそうです。騙される人は、今度の人は信用できると思って、また騙されてしまうものです。詐欺師というものは、人を騙すことのできる人で、何らかの魅力があるものなのです。だから人は心を許してしまう。そして、大切なお金も託してしまう。
 人間関係はとても大切だし、友人や家族はないがしろにしてはいけないと思うのですが、人間というもののいいところ悪いところ、人間というものの本質というべきでしょうか。
 人は大切にするけれども、人というものの本質を見誤ってはいけません。シェイクスピアの戯曲に「リア王」というのがありますね。黒澤明監督の「乱」という映画はリア王原作の映画です。老王が実の娘に裏切られていく悲劇です。そこには人間というものの本質が多面的に描かれています。すでにご存知かもしれませんが、人生の経験を重ねて再び触れると、前に気づかなかったことも見えてきて作品の本質に迫れて、自分の人生にも大いに役に立ちます。オススメです。
 歴史を振り返れば権力を巡って、親子、兄弟で殺し合いをしたり、現代も会社の経営権を巡って親子で血みどろの喧嘩をすることもありますね。人間とはどういうものなのか、きちんと知っておくことは、自分のお金、資産を守ることにも繋がると思うのです。

メール2
 はじめまして。 ツイッターでたまたま見かけて、 貯金ゼロのあなたのためにを読みました。 
 困っている人がいたらメールください、と書いてあり、タイムリーに、今すごく切羽詰まっているのでメールしてみることにしました。 
 現在、30歳で、貯金が1万円です。 
 18
22歳まで、正社員で働き、体調を崩してやめ、体調を優先し、アルバイトしたり休んだ日の日々。 祖母、母と一緒に暮らしていました。 
 そうこうしているうちに、震災があり、1ヶ月県外で避難。 どうしても生まれ育った街へ帰りたくて、一人で、住んでいた家へ帰る。 分譲のマンションだったため、光熱費、管理費をアルバイトでまかなっていました。 
 1
年後、母と祖母が帰ってきて、生活。 もともと認知症だった祖母が、今年の夏に施設へ入所。 今まで長らく介護をしてきた母が、突然、県外へ出たいと言い、一人で県外へ引っ越し。 分譲のマンションに一人暮らし開始。 
 マンションを売りたいので、引っ越ししてほしいと言われ、現在、部屋を探し中。 
 このメールがどこに届くかわからないのですが、この先どうしよう、と切実に思っていたところ、たまたま記事を見つけたので、メールさせていただきました。

佐藤から
 30歳で貯金が1万円では、貯金とは言えませんね。何かあったらすぐに生活が破綻してしまいます。メールを読んでいると、アルバイトなどの仕事をされているのでしょうか。今までは、光熱費、管理費だけで家賃は不要だったけれども、一人暮らしとなれば家賃も必要ですから、その分は収入も多く必要です。今は体調を優先しつつの生活を送れているのだと思うのですが、家賃のために仕事が過重になったら、また体調を崩すということもあるのではないかと心配です。
 あなたが30歳なら、お母さまはもうすぐ60歳という年齢ではないでしょうか? もしかしたら、それ以上かもしれませんが、これから加齢とともに変化の時を迎えるはずです。あなたが一人で暮らしているのなら、まずは体調最優先で暮らしていけるように、お母さんとご一緒に住むことも検討されたらどうでしょう。
 30歳という若さですから、今はまだ無理が利くのかもしれませんが、人生は長いです。そして、貯金が1万円だと、もしも賃貸住宅に住んで体調を再び崩して仕事ができなくなり収入がなくなる、もしくは、仕事先の事情で収入が減ることが起きれば、すぐ生活が崩壊してしまいます。ですから、最優先事項は一体何なのか。考えてみることが必要だと思います。
 いろんな意味で人間というものは支え合って生きていくものだと思います。特に家族で支え合って生きていくというのは、その基本だとも思います。それは、心も経済的にも言えることなのです。支え合うということは、一方的ではいけません。支え合わなくちゃいけません。
 そして、この連載では、住宅の問題についても考えてみるつもりですので、これからもどうか続けて読んでくださいね。

 ということで、今回は二つのメールにお答えしました。皆さんも、何か相談ごとや、連載を読んでの感想などありましたら、編集部までお寄せください。できる限り取り上げていきたいと思います。
 今月はこれでおしまいです。そうそう、今年はインフルエンザが猛威を振るっているそうですね。ホームドクターのI先生のところで、予防注射を打ってもらいました。3500円でした。皆さんも気をつけてくださいね。次は新年に更新いたします。それでは、良いお年をお迎えください。



【ご意見などはこちらのメールアドレスまで】
亜紀書房・編集部:akichi@akishobo.com

(第2回・了)

この連載は月1回更新でお届けします。
次回2020年1月8日(水)掲載