2000万円足りない人の、とりあえずの500万円 佐藤治彦

2020.1.11

03理想的な住まいを考える


 あけましておめでとうございます。新しい年を迎え、どんな願いを皆さんは持たれたでしょうか? 今年もよろしくお願いします。

 生活するためにはお金が必要です。だから、お金がカツカツだと楽しくないです。そんな生活から脱出しましょう。日本ではお金のことを考えるのは卑しいことだと思われてきましたが、お金に余裕が全くないと、気持ちまで余裕がなくなるものだと思います。お金は大切です。お金が貯まるような生活に変わっていくことが大切です。でも、それはケチになれということではありません。
 お金が貯まるような生活とはなんでしょうか。一言で言えば生活とお金の使い方の見直し。例えば、前回考えて頂いたこともその一つです。それは、ストレスとどう付き合うかということでした。現代人はストレスを解消するためにお金を使いすぎている傾向があると思うのです。
 ストレスを解消するために、食べ過ぎる、飲みすぎる。衝動買いでストレス発散する人もいます。男性に多いのは、夜の街で遊んだり、ギャンブルにのめり込んだり。他にコレクションすることにお金を使う。集めるのも、飾る用と保存用と同じものを二つ買う。買うものの箱にしまっておくだけです。アイドルと握手するために同じCDを何十枚も買う。ストレスだらけの現実社会から逃避するためでしょうか。2.5次元ミュージカルに毎日のように入り浸る。そんな人もいます。そのために貯蓄がほとんどできない、そんな将来が危うい生活をしているのであれば、それは考え直してみる必要がありますと申し上げました。ストレスは避けられません。その解消方法は必要です。その方法をできるだけ財布に優しい形でも見つけてみる。そういう話をさせていただきました。

 決してライブや観劇は勿体ないから辞めろなどとは申し上げてはいませんが、ネットでの反響を拾っていくと、私の文章からそう言う風に思った方もおられたようでした。うまく伝わらなかったのですね。
 私は完璧ではありません。私の文章も完璧ではありません。伝える技術も同じです。さらに、私の考え方や思いがすべての人に共通しての正解だなどとも思っていません。これから10年後には考え方が変わっているかもしれません。特に今のような社会も経済環境も激変していく時代には大いにあり得ることだと思います。ですから、私の文章を材料にして、というよりか踏み台にして皆さん自身で考えていただきたいのです。私が皆さんにお約束できるのは、経済と生活、マネーのことを仕事にして25年以上たち、そこから見えてきた自分の考えを正直に出来るだけわかりやすく綴っていくと言うことです。

 皆さんにお願いしたいことがあります。せっかく時間を使って読んでいただくのですから、私の文章の細かいところに敏感になりすぎて思考や考えることを閉じてしまわないで頂きたいです。少し大らかな気持ちで、そうかもしれないな? と思いながら、ふわっと読んでください。もちろん、全部をそのまま鵜呑みにしていただく必要はありません。そう佐藤は考えるのかもしれないけれど、自分には向かないな、当てはまらないな、と読み進めてください。
 社会は多様化し、個々人でいろんな背景、いろんな考え方、価値観を持ちながら生きています。そんな時に、これが誰にでも正解です! と言えることはほとんどありません。私の文章は皆さんがひとりひとり、個々人の答えを導くための考える道筋を示すものです。問題点を取り上げ、私なりの考え方を示すしか方法はありません。
 そして、お金では得できたとしても、ハッピーで無くなったら元も子もありません。ですから、経済評論家の書く文章ですが、気持ちのことにも触れながら綴っていきます。ずいぶん言い訳がましい文章ですが、それが正直なところなのです。長くなりましたね。では、今回の質問です。


Q2、今の住まいは、あなたにとって理想的な住まいですか? あなたにとって理想的な住まいとはどんなものでしょう?

 前回よりも具体的な話になりました。さて、家を買うにしても、借りるにしても、長い人生で考えると本当に多くのお金を住まいに使います。自分の自由になるお金のうち、最低でも20%。いや30%以上を住まいのために使うのも良くあることです。ですから、お金に困らない人生のためには、この住まいのことで間違った選択をしてしまうと他でどんなに工夫をしても取り返しのつかない場合があるのです。新年になると3月の年度末を目前に控え、就職や転職、異動などで住まいの移動シーズンが始まるころです。また、今年は家を建て直そう、家を買おう、建てようか、ということを考えるのも1月が多いものです。
 あなたの住まいは理想的な住まいですか? この質問に多くの人は「理想的な住まいからはほど遠い」と答えるのではないでしょうか。
 趣味の部屋がある家。大きくて綺麗なキッチン、日当たりのいい大きなベランダや庭のある住まい。駅から近い、買い物や医療施設にアクセスしやすく便利な場所の賃貸住宅。今ならタワーマンションで素晴らしい眺望のある住まい。海辺や山の側がいいという人もいるでしょうし、都会が好きな人もいるでしょう。ま、人それぞれです。
 でも、こうしたものは、理想的な住まいといっても実現が難しい夢の住まいです。私のいう理想的な住まいと違います。もっと現実的、生活に根ざして理想的な住まいになっているか考えていただきたいのです。私のいう理想的な住まいで考えていただきたいことは、必要なものはまあまああって、無駄のない住まいであること。住まいに対して使うお金に対して適当であること。他の言い方をすると重荷になってない住まいです。どういうことでしょうか。

 都会の100坪の土地に一戸建て、5LdK70歳近い老夫婦2人が住んでいるとしましょう。庭木の手入れ、家の前の掃除、家の中にはあまり使わない部屋もありますが、掃除は必要です。大きな家だからこそ冷暖房費も莫大です。庭木の手入れには植木屋さんに手間賃を払う必要があります。雪が降れば雪かき、落ち葉が散ればその処理も必要です。週に一度は家の前を履く。そういうことをする体力や時間があるか、人に頼む経済力もあるのであれば、大きな住まいもいいでしょう。もちろん、固定資産税に相続税、火災保険料、修繕費も必要です。夫婦のどちらかが、体調を崩し施設に入るとなれば、その入居費用もかかります。その時にすぐに支払えるだけの資産があるのであればいいのでしょうが、そこまで考えると、老夫婦にとって大きな住まいというのはおそらくほとんどの人にとって理想的な住まいではないはずです。むしろ重荷になるはずなのです。
 20代のひとり住まいのワンルームや1K、1LDKの賃貸マンション。日当たりのいい南向きで喜んでみたものの、仕事が忙しくてウィークデーは朝7時には家を出て、午後8時前には家にいたことがほとんどない。週末もデートで家にはほとんどいない。いや週末は疲れているので午後までゆっくり寝ていたいと思ったら、南向きの窓からの日差しで寝られたものじゃない。同じマンションでも南向きの日当たりのいい部屋でなければ、毎月5000円安かったとなれば、その部屋は年間6万円の支出増につながっているだけで決して理想的とは言えないのです。
 老夫婦の所有する大きな一戸建ては、子どもたちの相続争いの火種になりがちです。高収入な会社員だと思っていたら、意外に小さなワンルームマンションやアパートに住んでいて、そこを訪ねてきた彼女ががっかりして交際が終わってしまうかもしれせん。しかし、彼女が愛していたのは彼ではなく経済力だったのかもしれないと思えば、良かったのかもしれません。大きく立派な住まいに住むことを日本人は追い求めてきました。つい20年くらい前までは、それが信用につながるとか社会的ステータスだと言われたりもしました。そういう考えかたが日本人に染み付いているために、少し無理して大きな家、高い賃貸に住みたがる人が多すぎます。それが必要なのであればいいのですが、無駄につながっていないか考えてもらいたいのです。
 特に他人に対する見栄のようなもの、経済力を誇示するための住まいにお金を使い続けることは賢いことなのでしょうか。考えていただきたいのです。別にお金持ちだけではありません。家のためにお金がまったくない。貯蓄がない。ローンがある。そんな人がどれだけ多いことでしょう。

 先ずは、賃貸住宅にお住いならば、今の家賃に見合った住まいかどうか考えてみましょう。また、住まいを毎日の生活にうまく活用できているかどうかについても考えてみましょう。同じ6万円の家賃ならば、もっといいところに住めるかもしれないし、8万円の家賃にしてはとてもお得な住まいだと思うけれど、十分に活用できていないなあと思うかもしれません。自分の予算からは少し高い部屋だけれど、前に住んでいたところと比べると駅に近く毎日の通勤時間を片道30分、往復で1時間節約できるとなれば、毎月25時間も時間の余裕ができるはずです。それが少し高くなった家賃に見合っているかを考えてみるのもいいでしょう。また、住まいそのものの家賃だけでなく、近くに24時間営業のスーパーがあるので、コンビニを使わないというのであれば、家賃は少し高くても毎月の食費を抑えられているかもしれません。住んでる地域の地方公共団体の子育て支援、住宅支援があるので助かるという場合もありますね。住まいが変わることで家賃だけでなく、生活全体の支出も変わるはずなのです。この春、新しい住まいを考えている人は、家賃だけでなく総合支出がどう変わるかを考えてみてください。理想的な住まいというのは、そういう様々な要素から導き出せるのだと思うのです。最後にもっと大胆な考え方をした人の話を紹介させていただきたいと思います。

 私のラジオ番組を聴いてくれていた若い友人で4人家族の人がいます。毎日懸命に働いていても子どもや妻と過ごす時間がほとんどないのが悩みでした。いったい何にお金を使っているのかを考えてみたら、家賃が一番大きい。働くだけ働いて、大好きな家族と一緒の時間がとれない。なんのために働いているのか分からなくなったというのです。会社に働く時間の見直しや少し給料を上げて欲しいと交渉もしたけれど、今の時代ですからね。それもできなかった。そこで、給料は少し下がるけれども、家族ともう少し時間の取れる職場に転職した。でも、そうなると今の家賃を払うのは難しい。考えてみると、妻の実家はそばで、実家は一戸建てで空いている部屋もある。それなら、妻の家に同居させてもらおうとなったのです。可愛い娘とまだ幼い孫とも同居できると妻の親側も大喜び。婿養子でもないのに、妻の親の家に同居するなんてカッコ悪い。そんなくだらない見栄を捨てただけで家族の時間がとれ、生活も少し楽になったというわけです。これから年齢を重ねていく親にとってみても若い家族が家にいると何かと安心ですね。高いところのものを取ってもらう。重い家具を動かす。新しい家電を使いこなす。少し遠くのショッピングセンターに買い物に行く。同居だからこそのメリットもあるはずなのです。できること、行動範囲も広くなります。庭のある家で二人のお子さんが大喜びしてるとのことです。
 私が皆さんに考えてもらいたいことはこういう工夫なのです。実家は遠く離れているから難しい。もちろんそういう人も多いでしょう。それでは今増えているシェアハウスはどうでしょう? また、新しい動きとして、東京では都心での地域の祭りの担い手がいないので、若い人で祭りや地域の行事に参加することを条件に無料で部屋を提供するとか、高齢の人が一人暮らしは寂しいので、やはり無料やそれに近い金額で部屋を貸すという動きも出ています。
 賃貸用住宅に現在846万戸(2018年現在)の空き家があります。その傾向は少子化も相まってどんどん増えています。2013年から5年間だけで首都圏だけで、東京都の31万戸をはじめ1都3県だけで71万戸も増えた。誰かが住んでいて空いている部屋はいったいどれくらいあるのでしょう。すでに持ち家をお持ちの方で子供が独立してしまった。空き部屋がいくつかあるとなれば、その空き部屋を貸して収入を得ることも十分可能だと思うのです。私は若い頃に買ったマンションのローンを払うのに、居間をバイオリン教室に貸していたことがあります。週に1度、私が働きに出ている昼間の3~4時間を使ってもらって、毎月3万円もらっていました。バイオリンの先生によると、スタジオを借りるよりずっと安くて助かったと喜ばれました。他人が家に入るなんて嫌だなあと思う方もいるでしょうが、若い男にとってみると他人が入るからこそ、こまめに掃除を心がけたり整理整頓するというプラスの側面もありました。そして、何よりも臨時収入で相当助かりました。僕が幼少の頃、杉並区の永福町のそばに小さな一戸建てを建てた両親は、子供部屋にしようと思っていた部屋に大学生の下宿人を二人置いて活用していました。子供たちに個室が必要になる年齢まで活用しようというわけです。そんな両親に影響されたのかもしれません。

 まだ家周りのことについては話したいことが山ほどあるのですが、それは書籍にするときに詳しく書き足したいと思います。皆さんにとって理想的な住まいとはなんでしょう? 住居費に押しつぶされそうな生活をしていませんか? この春、それを一度じっくり考えていただきたいと思うのです。
 この連載に関する皆さんの感想、ご意見、ご相談をお待ちしています。編集部まで気軽にメールをください。お寄せいただいたものの中で私が答えられそうなものには、この連載の中でお答えしていきたいと思います。では、また来月まで。



【ご意見などはこちらのメールアドレスまで】
亜紀書房・編集部:akichi@akishobo.com

(第3回・了)

この連載は月1回更新でお届けします。
次回2020年2月8日(土)掲載