2000万円足りない人の、とりあえずの500万円 佐藤治彦

2020.7.7

09新型コロナウィルスの経済激変で一番困った人は誰か?

 

皆さん、こんにちは。お元気ですか? 7月になりました。暑中お見舞い申し上げます。

5月末に緊急事態宣言が解かれ、街に少しずつ活気が出てきたかなと思ったものの、それとともに東京など首都圏では新たなコロナウイルス感染者が増えてきてます。首長選挙もあり、どうも行政のしていることをそのまま信じることができません。私がへそ曲がりなのかもしれませんが、今までの数々の事件を振り返ると、ときには行政のすることも疑って自分なりの判断を下すことが自分の身を守るために必要だと思っています。

世界のコロナウィルス感染者はますます増えています。この原稿を書いている今は、感染者は1000万人、死者も50万人を超えています。6日間で100万人も患者が増えるペースです。しかし、この数字さえ、本当かどうか分からないです。アフリカやアジア、南アメリカから出てくる数字には信頼性が低いものがありますし、コロナの死者の定義も曖昧だからです。いずれ歴史が検証してくれるでしょうが、今は自分の身を守ることが大切です。日本国内でも、過去に優生保護法、ハンセン病、ヒ素ミルク事件、水俣や四日市を始めとする公害病、エイズ薬害、B型肝炎などもう少し早く行政が対処してくれれば、もっと政治家が学者の意見を聞いてくれれば、そんな事例が山ほどあります。行政が言うのだから、疑わずに安心して従っていればいいのだと言う考え方を私は自分や家族の身を守るためにも持つべきではないと思います。参考にはしますが、果たしてそうなのか? と疑問があれば自分で調べ判断し行動します。今回の新型コロナウィルス対策でも、いつまで経っても諸外国のようなPCR検査が行われないことには大いなる不安と不満を感じています。

そんなわけで、この1ヶ月、一度だけ遠出はしましたが、今もステイホームが中心の生活になっています。

ところで、皆さんのところに一人10万円の特別定額給付金は振り込まれたでしょうか? よくよく考えてみると、今回の新型コロナウィルスの蔓延で政府が国民と日本に住む人全員に等しく差し伸べてくれた援助というのは、これだけだったような気がします。マスクは1世帯2枚配られましたが、本当に必要なときに配られた人は圧倒的に少数派でしたし、単身者にも5人家族の世帯にも2枚というのは、公平だとは思えないからです。これだけ経済が打撃を受けているときに1人10万円だけでは援助というより見舞金という程度ですね。全く足りません。

新型コロナウィルスで私たちの生活に影響が出始めたのが2月。失業者は3月からどんどん増えていきます。内定取り消しも非正規労働者の雇い止めもありました。探しても仕事が見つからないからと仕事を探すのを諦めてしまった人が300万人ほどいると言われます。正社員でなかったため、雇用保険未加入で手当ても降りないので、ハローワークで仕事を探すこともしない人も多いと聞きます。雇用保険(失業保険)の手当てをもらうには、仕事を探していることが必要で、そのために自分が探している仕事は今は見つからないだろうと思っていてもハローワークに行く人は少なくないです。日本では仕事を探していない人は失業者に含めません。ですから、仕事がなくて働くことを諦めてしまった人は失業者の数字に含まれないのです。ですから、国が発表する失業率ではいまだに3%未満なのですが、実態はもっと高いはずです。

もちろん、正社員の人の生活も相当なダメージを受けています。残業手当がなくなったために手取りが減った人が多数出ています。会社の業績が悪いために夏のボーナスが大幅ダウンになったり、出なかったりする人も多いです。また、この数ヶ月は特に大変な思いをした医療従事者でさえ、コロナで病院に来る人が減ったため病院の経営状態が悪くなりボーナスが減った人もいるのです。

というように、いろんなダメージを受けている人がいますが、そんな中で最もダメージを受けている人はどんな人でしょうか? 困っている人です。それは毎月決まったお金が出て行く人です。

どんなものがあるでしょうか? 例えば、家賃や住宅ローン、また、子どもの教育費、車のローンなど分割払いで買った商品の支払い、スポーツクラブなどの会費、借金などがあります。また、持病などがあり、毎月決まった医療費が必要な人もいるでしょう。

その中で一番大きいのは、金額も拘束される期間も長い住宅費だと思います。ということで、今月の質問です。

Q 今までにない超低金利の時代。住宅は買ったほうが得だと思いますか? 賃貸のほうがいいと思いますか? あなたは、マイホームを持ってますか? ローンはありますか?

先にあげた毎月必ず出て行くお金。この中で子どもの教育費はやはり減らしたくないものです。なぜなら、子どもの将来に大きく影響するからです。払うのが大変になったら、奨学金や教育ローンを組むことも仕方のないことだと思います。コロナによって授業がなくなったにも関わらず、授業料は予定通りに支払わなくてはならず、せっかく入った大学や専門学校を諦める若者が多いと聞いて胸を痛めずには入られません。今の学生は、親の援助があるにしても、自らも働いてなんとか学業を続けている人が多いからです。他人の子どものことでさえ、こんなに哀しく辛く思うのですから、自分の子どもだったら胸が潰れる思いでしょう。

このほかのもの、例えば、スポーツクラブなどの月会費はやめることもできます。医療費に関しては国の健康保険制度などでは収入が少なくなれば、自己負担も少なく済むような制度設計になってはいます。

やはり一番厄介なのが住宅費です。金額も大きいです。

コロナウィルスの影響で収入が大きく減った人は少なくありません。収入が減ったのであれば、収入を増やす努力をするか、支出を減らすしか家計のバランスは取れません。コロナ不況から世の中が脱すれば収入を増やすことも可能かもしれませんが、当面は支出を減らすことが現実的な選択肢です。

緊急事態宣言が解除されたにも関わらず外食産業はなかなか回復していません。それは、外食することでの感染の不安と、それぞれの家庭の節約志向から来ていると思います。

家計調査などでは、食費と外食などは別の項目になりますが、私たち生活する者にとっての食費とは、外食や惣菜などを自宅で食べる中食、そして、自分で作って食べるものを合わせたものが食費なのです。ざっくりいうと、外食は自分で作って食べる金額の5倍、中食は3倍くらいになるでしょう。ですから、食費の節約をしようと思ったら、まずは外食中心から、自分で作る食事に変える。それだけで、3食栄養のあるものをバランスよく食べつつも金額は大きく減らすことができるからです。

衣類や耐久消費財も、当面必要なものはすでに持っていることが一般的です。ですから、壊れたりしない限りは支出を減らしても生活に大きな影響はありません。しかし、住宅費はそういうわけには行きません。それも、人が一生で働いて稼ぐお金の3割以上は住宅費に回されるとも言われます。

それでも賃貸であれば、大変ですが何とかなります。今まで10万円の家賃の物件から7万円の物件に引っ越すことや、しばらく実家で親と同居するという選択肢もあります。若い人であれば、友人などと欧米の若者のようにシェアハウスをすることによって家賃を減らすこともできます。これから先にリモートワークが本格化すれば、地方に移住して家賃を半分くらいにする人もいるでしょう。問題は持ち家の人です。それも住宅ローンが長く残っている人です。

住宅ローンを利用しなければほどんどの人が住宅を買うことはできません。30代半ばで住宅ローンを組んで住宅を買う人は多いです。何で買うんですか? そう質問すると、多くの人が家賃は払うだけで消えてしまうけれど、それと比べると持ち家は、住宅ローンを払っていけばいつかは自分のものになるからというものです。こうして、今後30年から35年の住宅ローンを払う約束をします。ボーナス月にはさらに多くのお金を払うものです。これは、給料が減ったり失業しても、契約者が生きている限り払わなくてはならない約束です。病死などした場合だけは保険などでカバーされます。家族が若くして病死して住宅ローンを払わずして自分のものになったと喜ぶような家族はいません。きっとローンなんかいくらでも払うから元気でいてくれた方がいい。そう思うのが当たり前です。

また、30代半ばまでにマイホームを買うということは、ほぼ定年まで住宅ローンを払い続ける契約をしたことになります。夫婦と子どもの幸せな家族がマイホームを購入します。新しい家に幸福感も強いでしょう。しかし、30年に渡る家族のドラマ(喜びと困難)はこれから始まるのです。長い人生の中には苦難の時も少なくありません。今回のコロナのように給料がどんと減る、ボーナスが出ない。中には解雇されてしまう。リーマンショック、東日本大震災、欧州通貨危機、ITバブル崩壊といった危機だけでなく、社会や経済の構造変化によって、正社員が中心の雇用環境が非正規で働くことが多くなっていき、年齢とともに上がっていった給料は増えないことも多くなりました。これからも、AI化など働く環境は変わっていくでしょう。それは収入が変化することを意味します。30代半ばで家を買ってローンを組んだ時にはきっと返せるだろうと思っていても、様々な困難が押し寄せるのです。他にも転勤転職、天災による被害、離婚で財産分割、子どもが家を出て家族の構成が変わる。地方の親の介護の面倒を見なくてはならなくなる。いろんなことが起こるのです。

つまり買った家にそのまま30年間、住み続けたいか、続けられるかは分からないものです。そして、肝心のローンが払えるかもわかりません。そんな時代に30年経ったら家は自分のものになるのだからと安易な考えに飛びつくのは気をつけたほうがいいです。それに、今から30年経って住宅ローンが終わるころも、今のキッチンやバス、トイレなどそのまま使えると思いますか? 壁紙や一戸建ての方なら塗装の問題、雨漏りもあります。はっきりいうと、住宅ローンが終わるころは、一戸建てなら建て替えの時期です。マンションでは住み続ける限り、管理費、修繕積立金、固定資産税、住宅に関する保険のお金を払い続けることになります。一戸建てと同じように水回りや部屋の模様替え、中にはマンション自体の建て替え時期も迫ってくるタイミングです。というようにマイホームだからと言ってローンが終わっても住宅に関する支出から逃れられる訳ではないのです。そして、今回のコロナの支援の中には賃貸住宅に住む人が家賃を払うのに困るような経済状態に追い込まれた時には家賃の補助や援助の仕組みが用意されましたが、住宅ローンを払っている人には、国や地方が半年分のローンを肩代わりしてくれるといったサポートは全くありませんでした。

どんな経済状態でも毎月決まった金額が出ていくこと。それは将来の自分の生活や収入を縛ってしまうものだということを強く認識して生きていかなければ、これからの時代はサバイブできません。

今回の話をまとめたいと思います。賃貸住宅は毎月家賃が出ていくけれども、仕事や家族の変化に合わせた住宅に移ることも可能。つまり、所得が大きく減った時などにもある程度は弾力的に対応ができる。しかし、長期の住宅ローンを組んでマイホームを買うと、所得が減るとすぐに生活が追い込まれてしまう。最悪の場合は、自己破産に追い込まれたり、マイホームを手放してもローンだけが残ってしまうこともありえるのです。マイホームは環境の変化に簡単には対応できないのです。

ドリームジャンボ宝くじが当たって3億円のお金が入ってきたとか、親から住宅を相続したという人、所得が高く頭金を多く用意でき住宅ローンを余裕を持って払い続けられると言った特殊な場合を除くと、十分に考えたほうがいいと思うのです。

さらに付け加えると、人口減少の日本では、大量の移民の流入でもない限り、住宅を買う人はますます減っていきます。さらに、現役世代は親世代から不動産を相続していく時代です。無理してマイホームを買うことがどれだけ賢い選択なのか考えてみるべきだと思うのです。


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(第9回・了)

この連載は月1回更新でお届けします。
次回2020年8月7日(金)掲載