第11回街路の傍観者・監視者

監視する装置  ロンドンの街を歩いていて、ある日、気づいたのだが、地下鉄そして街のあちこちにヴィデオ・カメラが設置されている。その数の多さに驚いた。駅などでは何の表示もなくカメラだけがこちらを見ている場合もあるが、街の中…(続きを読む

2013年1月29日

第10回個人の居場所――室内・パソコンへの侵害

 不愉快な話ではあるが、ある種の犯罪の傾向というのは、同時代の社会のあり方を映し出しており、ひとつの社会的表象と見られてきた。また、当然のことながら犯罪を排除し回避することが行われてきたわけだが、それはつねに個人をいかに…(続きを読む

2012年12月12日

第9回防御・防護・遮断することをめぐって

 数年前、しばらくニューヨークで生活するという体験をした。 ニューヨークでは、Eメール(以下メール)での連絡が多いことと、対応が早いので、そのペースにあわせないといけないような雰囲気で、毎朝、朝食がすむとメールの確認をす…(続きを読む

2012年11月20日

第8回鍵=内と外を認識させる装置

 何かを収納しておく箱であれ、室内空間であれ、密かにその蓋をあけ、あるいは扉を開けそこに忍び込み、中に収められた大切なものを盗み出すといった行為は古くから行われてきた。もちろん、盗むあるいは侵入するという行為は、「私有」…(続きを読む

2012年10月15日

第7回わたしのもの(私物)――わたしの場所(室内=内面)

 プライバシーの意識が広がったのは、それほど古いことではない。フランスの歴史家フィリップ・アリエスは『子供の誕生』(杉山光信・杉山恵美子訳、みすず書房)で、「十八世紀以後、家族は社会との間に距離をもち始め」「個人生活」の…(続きを読む

2012年9月21日

第6回女中タキの「部屋」――終の棲家

 自分の気持ちにぴったりとした「終の棲家」というのは、なかなか持てるものではないようだ。持てるか持てないかということ以前に、自分にとって「終の棲家」とは、どのような住まいなのか、そのイメージを確実なものにすることは、なか…(続きを読む

2012年8月23日

第5回放浪ではなく終の棲家――林芙美子邸

放浪記  林芙美子の日記をもとにした私小説『放浪記』は、よく知られているジョン・P・オードウエイ作曲、犬童球渓の訳詞による唱歌「旅愁」の歌詞が冒頭に置かれている。「恋いしや古里、なつかし父母」という歌詞の引用に続いて、次…(続きを読む

2012年7月20日

第4回室内をめぐる物語――ポール・オースター『ブルックリン・フォリーズ』

夢想の避難所:ホテル・イグジスタンス  物語作者ともいうべきポール・オースターの小説では、少なからず「室内」が人物の存在にかかわっている。二〇〇六年に刊行された『ブルックリン・フォリーズ』でも、冒頭ちかくですでに、文学研…(続きを読む

2012年6月25日

第3回童謡作家の室内――「木兎の家」

 北原白秋は、多くの童話を創作しているが、ジャンルとして独自性を生み出していったのは、むしろ「童謡」かもしれない。白秋が最初の童謡集『とんぼの眼玉』を刊行したのは、一九一九年のことだ。「赤い鳥小鳥」などよく知られる二八編…(続きを読む

2012年5月22日

第2回宮沢賢治のコスモス(楽園)=花壇

 宮沢賢治は、数多くのノートと手帳を残している。それらのノートや手帳は『新修宮沢賢治全集』(1)にまとめられている。同全集では、それぞれのノートや手帳に名称を付けている。たとえば、「MEMO」の文字が入っているので『ME…(続きを読む

2012年4月9日

第1回偏奇館の『断腸亭日乗』――荷風の室内

日乗(日記)への執着  荷風の日記『断腸亭日乗』は、一九一七(大正六)年九月一六日から、死の前日となる一九五九(昭和三四)年四月二九日までの、四二年間にわたっている。日々の自身の行動、新聞記事、街での風俗や噂話などその記…(続きを読む

2012年2月23日