いまから遡ること50年前の1968年春、ビートルズはメディテーション(瞑想)修行のためインドの山奥に滞在しました。彼らは数週間をそこで過ごし、書かれた楽曲は同年11月に発売された彼らの通算9枚目のアルバム『ザ・ビートルズ』になるのです。彼らが自ら立ち上げた「アップル・レコード」から初めてリリースされたこのアルバムは、のちに“ホワイト・アルバム”と呼ばれるようになりました……
なぜ突然こんな話をしたかというと、約10年ぶりとなる僕のマンガ単行本は、ビートルズのこの『ホワイト・アルバム』にオマージュを捧げたコンセプト・マンガだからなのです! ……といっても内容を倣ったとか、装丁を真似たとかそういうことではなくて、着目したのはアルバム誕生の成り立ち、すなわちインドでの滞在制作を経て完成したという点です。「よし! ビートルズと同じことをマンガでやろう! 今年は『ホワイト・アルバム』50周年だし!」と思い立ち、3月に僕はひとりインドへ旅立ちました。向かったのはインド北部、ガンジス川が流れるリシュケシュという街です。ビートルズが修行したマハリシ・アシュラム敷地内にある、ビートルズが曲作りをしたバンガローの屋上に通い続け、マンガの構想を練る2週間。「以前描いた短編マンガの中途半端な断片が使える」とか、「数年前に亡くなった父親のこともそろそろマンガにしなくては」とか、次々とアイデアが浮かんできました。これがインドパワーなのです。
インドから帰国後、僕はすぐに原稿制作に取りかかりました。そして『ホワイト・アルバム』50周年記念盤リリースとなる11月9日、ついに『ホワイト・アルバム』と同じ成り立ちで完成した僕の新刊をリリース! ……となるはずでしたが……無念!! 実はまだ単行本は完成していないのでした! 泣!
ですが、版元の亜紀書房のウェブマガジン「あき地」にて、連載のかたちで11月9日(金)より出来ている部分を順次公開することにします。これで『ホワイト・アルバム』オマージュとして……なんとか成立したかな……
実は新刊のタイトルはもう決まっていて、『あげものブルース』といいます。3人の男の、微かに交差するそれぞれの人生。そこにはいつもあげものがあった……
う~、カッコ渋い!! 結構染みるストーリーになっていると思います。来春早々には必ず単行本になります。それまでは「あき地」の連載をお楽しみいただければ幸いです。
(文/本秀康)
この連載は月1更新でお届けします。
*次回:2018年11月9日(金)掲載