あんぱん ジャムパン クリームパン 青山ゆみこ・牟田都子・村井理子

2020.4.23

01小さくなった世界。

 

突然コロナがやってきた。
いろんな不便と、不安と、怒りを抱えながら、毎日を過ごす。
私たち、これからどうなっちゃうんだろう。

でも、みんなでおしゃべりすれば、少しは気が晴れるかも。
女三人による交換日記。


理子さん、牟田さん、こんにちは。

理子さんはブログを、牟田さんはTwitterでの呟きを読んでいるので日常的にお会いしている気分ですが、思い起こしてみれば、実際にはしばらくお目にかかっていません。

理子さんとは、黒ラブハリーくんとの生活を綴ったエッセイ集『犬ニモマケズ』に収載された対談時に、ご自宅にお邪魔した昨年(2019)の夏以来ですよね。

牟田さんとは、わたしの近著『ほんのちょっと当事者』発刊記念トークイベントにお運びくださった、昨年末の荻窪のTitleさんと、荏原中延の隣町珈琲さん以来と記憶しています。

そうか、理子さんとは一年経っていないし、牟田さんとは半年ほどなのか……。

でもなんだろう。一年とか半年とか、そういった「時間」がなんだかぴんとこないんですよね。ぴんとこないというより、しっくりこない。

新型コロナウイルスの影響によるあれこれが、わたしの生活に直接関係し始めたのは2月頃だったと思います

既往症に肺炎があり、気管支炎と気管支ぜん息が持病という呼吸器系がへなちょこ人間なので、わたしは2月中旬頃から、ほとんどの会食予定をひとまず延期するようになりました。マスクはもう当時から手に入らなかったので、友人に郵送でわけてもらったことも思い出します。

人と会う機会が極端に減り、電車に乗ることもほぼなくなり、自宅とその周辺だけがわたしの世界になった。

紀元前/紀元後のように、コロナ前/コロナ後に「時間」が線引きされ、その「コロナ後」の世界はものすごく小さな世界だった。

なんだかコロナ後の世界って、時間の感覚がないんですよね。
最近だと、今日が何曜日かもわからなくなることも多くて、だんだん昨日と今日と明日が溶け合っていくようにも感じます。そのことにどこか不安になる。何が不安なのかわからないのですが。

とにかくいまは「コロナ前」のことが、すごく遠くに感じられる。別の世界のことのように。

端的にわたしたちの「日常」が大きく変化したのでしょうね。

と書いて、あのね、こういうふうに『わたしたちの「日常」』って一括ってしまうと、全然「わたしたちの日常感」がなくないですか。

わたしは「わたしたち」じゃない。

わたしは「わたし」として生きている。
はずなのに、突然、「わたしたち」にさせられたような、居心地の悪さというか、お尻の座らなさがこの数週間あります。

そういうことに、なんだかむしゃくしゃしちゃう。
このところ、わたしはしょっちゅうむしゃくしゃしています(ひらがなだけの一文ってすごいな)。
苛立ち(3文字ですむ。漢字すごい)。

いま、昨年の秋くらいまで取材を進めていたものを、1冊の書籍にまとめる作業にかかっています。実はこれ、2月に書き上げていたはずの原稿です……。

4月の頭に、夫が心筋梗塞一歩手前の不安定狭心症で入院して、ばたばたしたというのもありました。

でも、それ以前の3月、感染拡大に対する行動自粛が言われ始めた頃から、自分でも嫌になるくらい筆が進まない。

その本は「近しい人を亡くしたあと」についてお聞きした内容なので、そもそも簡単には書けないのはあります。

自分のなかの深いところにぐぐっと潜って、そこで見えた風景や感じた肌感覚を言葉に置き換えようとしているんだけど、そこまで潜る前にわたしの息が上がってしまう。深く潜らないと取り出せない言葉があるのに、はっはっと浅い息を繰り返すばかりで、熟考するための長い息づかいができない。

言葉にたどり着けないもどかしさは、どこか身体的に不自由な感覚です。もっと走れると思っていたのに、全然足が動かないというような。

もちろん、新型コロナウイルスのあれやこれやの前にも、「書く」ことで似たような足踏み状態に陥ることがありました。でもその時とは全然違う気がする。

なんというか、「わたし」である前に「わたしたち」でいなきゃいけないような「圧」が強くて、自分の頭や身体がうまく使えないような。

他にもたくさんの小さな変化があります。

溺愛している猫のシャーがものすごくよく鳴くようになりました。夫が在宅になり、終日同じ空間にいることに戸惑っているのかもしれません。
シャーが鳴くと、以前なら甘えてきてかわゆいと思えていたのに、最近はあまりの頻度に仕事の邪魔に感じたり、ちょっといらっとくる時もある。ばかにもほどがあるほど可愛がっている猫にですよ……。ちっせーよ。そんな自分がかなしい今日この頃です。

お二人はどうでしょう。まだまだこれから感染が拡大すると予測されていますし、どうぞお気をつけてお過ごしください。

あんぱんこと青山ゆみこ

 

タンドリーぎゅうぎゅう焼き

(写真)理子さんの「ぎゅうぎゅう焼き」のタンドリーチキンアレンジです。 自分の機嫌をよくするために、できるだけ美味しいものを食べるようにしています。 すくすく育っています。コロナ、ゆるさん。