神社で一拝、酒場で一杯。各地の神社仏閣やパワースポットにお詣りをし、その街で出会った酒場でふらりと飲む。それが「ごりやく酒」。
池袋西口の氏神様
長年池袋で会社員をしていた時期があり、昼休みにはやたらめったらと無目的な徘徊をしていたから、界隈はたいてい歩きつくしたと思っていたが、その神社の存在を知らなかった。「池袋御嶽神社(いけぶくろみたけじんじゃ)」。 池袋という街は、大都会というイメージがありながら、駅から少し離れるだけですぐに牧歌的な住宅地になる。その感じが、僕はたまらなく好きだ。
徒歩10分もするとこんな雰囲気
「池袋御嶽神社」
池袋西口一帯の氏神様で、パワースポットとしても知られているという、池袋御嶽神社。鎮座年数は詳細不明ながら1573~1592年ごろと言われ、その約100年後の貞享四年(1687年)に社殿が創建された。 御祭神は、倭建命(やまとたけるのみこと)、神武天皇(じんむてんのう)、武甕槌命(たけみかずちのみこと)で、末社の「子育稲荷神社」には、保食神(うけもちのかみ)が祀られている。
正面の鳥居
玉垣にずらりと並ぶ「ビックカメラ」の名前が池袋らしい
拝殿
凛々しい狛犬
今日もしっかりとお詣り
裏手の歴史のありそうな看板には「大正四年」の文字が
「子育稲荷神社」
子育稲荷神社に納められた「願掛けキツネ張り子」は圧巻。また、池袋はその名前、そして街のある豊島区の形から、縁起担ぎで「ふくろう」を模した像などが多くあり、ここ池袋御嶽神社にもまた、幸せそうなふくろうたちがいるのだった。
願掛けキツネ張り子たち
ふくろうの家族
「平安な心で歩く梟の路」
ちなみに、境内にあった「開運招福おみくじ」をひいてみたところ、出たのは「かえる」。「宝かえる、無事かえる、若かえる」などのごりやくがあるとのことで、期待したいところだ。
「三福かえる」のおまもり
台湾料理店で昼酒を
さて、ふたたび住宅地エリアに戻り、本日一杯やれる店を探す。するとすぐに、1軒の店が気になった。駅までは歩いてあと5分ほどの距離があり、他の店も見つかるかもしれない。けれども、どうしても気になる。行くか戻るか、行くか戻るか。え〜い、行っちまえ! というわけでこの日のごりやく酒は、「台湾料理 味王」でいただくことに。
少しずつ飲食店が増えだしたころに出現した
「台湾料理 味王」
昼すぎだったためランチメニューも提供中だったが、僕が気になったのは単品。特に「排骨飯(骨付きロース入りごはん)」(900円)なるものが魅力的だ。入店と同時に、「ランチメニュー以外も頼めますか?」と聞いてみると、大丈夫とのこと。よし、今日は排骨飯飲みで決まり!
魅力的がすぎる
まずはブラックニッカを使った「クリアハイボール」(税込み400円)をお願いし、当然、排骨飯を注文。それらが届くまでの間に店内を見回してみると、あらためて、ここがものすごく本格的な台湾料理店であることがわかる。すべてのメニューが、ていねいに書かれた日本語訳がなければ、なにがなんだかわからない現地仕様だ。
「クリアハイボール」
本格的な短冊メニュー
しばし後、いよいよ排骨飯が到着。これがもう、あまりにも僕好みすぎてその場で小躍りしだしたくなるような一皿だった。
「排骨飯」
薄めだがそのぶん巨大なかつが平皿に盛られたごはんを覆っている。それがただの白飯ではなく、魯肉飯(ルーローハン)的に甘辛い肉がたっぷりとのっていて、さらに、高菜と漬けもの。これはもう、夢だ。夢が叶っている。目の前で。
巨大なかつ
メニューには「骨付き」とあったはずなのに骨が一切なく、柔らかくてサクサクで、ほんのりと台湾っぽいスパイス風味と塩気が効いているかつ。肉汁たっぷりジューシーで、日本式にソースどぼどぼではなく、そのまま食べて最高にうまい。しかもそれを、魯肉飯的メシのおかずにしてしまうというぜいたくさ。
クリスピーな衣がたまらない
ここだけでもうまい
サクサク、もぐもぐ。何口たべても絶品でまいってしまう排骨飯をつまみにハイボールぐびぐび。当然足りなくなって「ウーロンハイ」(400円)を追加する。あぁ、なんて幸せな時間なんだろうか。
「ウーロンハイ」
というわけで、今回も神様の恩恵にあずかりつつ、今後何度でも通いたい店と出会ってしまった、ごりやく酒。味王、次は友達何人かと連れ立って行き、あれこれ頼んでみたい名店だった。
(第7回・了)
本連載は、基本的に隔週更新です。
次回:2024年6月14日(金)掲載予定