ごりやく酒 パリッコ

2024.4.26

05阿佐ヶ谷「馬橋稲荷神社」と「わいたこ」のたこ焼き

 

 

 神社で一拝、酒場で一杯。各地の神社仏閣やパワースポットにお詣りをし、その街で出会った酒場でふらりと飲む。それが「ごりやく酒」。

 

それはもう運命

 この連載を始めて以来、僕が住む東京都を中心に、あちこちの地名に「ごりやく 神社」などのキーワードを加えて、縁起の良さそうなスポットを探すことが趣味のひとつになりました。
 そんな経緯で今回見つけたのが、阿佐ヶ谷と高円寺の中間地点くらいにある「馬橋稲荷神社(まばしいなりじんじゃ)」。そこで担当編集T氏に、「次回は馬橋稲荷神社へ行ってみようと思います」とご連絡すると、こんなご返信が。「馬橋稲荷神社、僕が20数年前に結婚式をあげた神社です!」。なんと、それはもう運命。ということで、T氏にもご同行いただき、いざ、今回のごりやく酒スタート。

 

「馬橋稲荷神社」

 

 JR阿佐ヶ谷駅から徒歩10分ほど。静かな住宅街のなかに突然現れる立派な神社が、馬橋稲荷神社。阿佐ヶ谷や高円寺は若かりしころに入り浸って飲みまくっては酔いつぶれていたんですが、こんな場所があるとはまったく知りませんでした。

 馬橋稲荷神社の創建は、鎌倉時代末期と言い伝えられているものの、詳細は定かではないそう。主神は「宇迦之魂神(うかのみたまのかみ)」と「大麻等能豆神(おおまとのづのかみ)」で、相殿に「伊弉册神(いざなみのかみ)」「美都波能賣神(みずはのめのかみ)」「菅原道真朝臣(すがわらみちざねあそん)、末社に「美都波能賣神(みずはのめのかみ)」「市杵島姫神(いつきしまひめのかみ)」がお祀りされています。

 広々とした参道には3つの鳥居があり、特に珍しいのが二の鳥居。御影石で作られ、左に昇り龍、右に降り龍の彫刻されています。このように龍の巻き付いた鳥居は珍しく、東京都内では、品川神社、宿鳳山高円寺稲荷と合わせて3つだけだそうで、「東京三鳥居」と呼ばれているのだとか。今年は辰年ということもあり、なんともごりやくの大きそうなスポットですよね。

 

「双龍鳥居」

 

 参道の両脇には人口の小川が流れ、そこに金魚やめだかが泳いでいたりして、さらさらと流れる水の音にも癒されます。なんというか、とても気のいい空気感。さらに見所は、手水舎。

 

こちら

 

 天然の岩の上に祀られた龍の口から、地下50mより汲み上げられた天然水が湧き出しているという、ものすごくありがたみと見ごたえのある手水舎なんです。

 

かっこいい……

 

社殿には

 

「天満宮」「稲荷宮」「御嶽宮」3つの名前が

 

 境内にはさらに、「厳島神社・水神社」、近隣の庭などにあったお稲荷で、引越しや建て替えなどの理由で祀れなくなったものが祀られている「稲荷社」などもあり、順にゆっくりとお詣り。

 

「厳島神社・水神社」

 

「稲荷社」

 

 紙に願いを書いて入れ、奉納すると願いが叶うという「願かけ狐」が、境内のお稲荷様の台座にずらりと並んでいる様子もかわいらしい。ちなみに、ひげのある狐が雄で、ないのが雌。好きなほうを選べるそうです。

 

「願かけ狐」

 

 僕は、白、黄色、ピンクから選べる「きつねみくじ」(500円)にあまりにもときめいてしまってそちらを購入。結果は「吉」でした。

 

「きつねみくじ」

 

 

初夏の爽やかな風を感じつつ  

 さてさて、それではお楽しみの酒場で一杯タイムといきましょう。散歩がてらにのんびりと歩きながら、阿佐ヶ谷駅付近まで戻ってきました。

 

阿佐ヶ谷駅周辺は

 

どの路地を見てもいい雰囲気

 

 ところが、午後3時すぎという少し中途半端な時間だったこともあり、昼飲みできそうな酒場も、頼みの綱の街中華や定食屋も、とにかく営業中のお店が見つからない!

 

めちゃくちゃごりやく酒っぽい店があったけど営業前

 

 小一時間ほど街をしつこく徘徊し、何度も行ったことのあるチェーン店などの他で唯一営業中だったのが、ガード下にある「わいたこ」というお店。

 

「わいたこ」

 

 ここでひとつ懺悔させてください。この連載、神社仏閣にお詣りし、そのごりやくで出会えた酒場に飛びこんでみるというテーマで始めました。ところがこの、わいたこさん、過去に一度、ふらりと入ってみたことがあって、いい店だというのは知ってしまってるんですよね。

 ただ、この日は他に選択肢が見当たらなそうなこと、また、編集T氏はこのお店に行ったことがなかったこと、などの複合的理由(言い訳とも言う)により、今回はわいたこさんで飲むことをお許しください。

 

テイクアウトもあり

 

 ただね、結果的に、ここが非常〜に良かったんですよ。
 店前の簡易的な野外テーブル席に座り、まずは生ビールと枝豆をもらう。すると、1年のなかでも最高といえる初夏の爽やかな気候と、キンキンの生ビール、ゆでたて熱々の枝豆の組み合わせが、まさに「なんも言えねー!」状態。道ゆく小学生が店員さんと「こんにちわー!」などと挨拶をしていて、ここが地域に密着したお店だということがひしひしと伝わってくる。もはや、これ以上の幸せなんてこの世にないんじゃないの? っていう気分です。

 

「一番搾り生中」(550円)

 

「枝豆」(150円)

 

 そしてそして、ここに来たら当然たこ焼きを食べないわけにはいきません。味つけやトッピングが豊富なのも楽しく、さらに、最小単位の6個を頼んでも、味つけを2種類選んでハーフにしてもらえるのが嬉しすぎる。今回は名物の「塩」と、逆にこってりな「めんたいマヨ」の2種を6個でオーダー。

 

たこ焼きメニュー

 

「たこやき(塩/めんたいマヨ)」(450円)

 

 天気がいいとはいえ風は強めの日だったので、油断すると吹っ飛んでいってしまうかつお節に大笑いしつつ、はふはふとほおばる。さくっとした表面と、とろっとろでだしの効いた生地の対比が、これぞ専門店のたこ焼きの醍醐味。シンプルな塩も、酒がすすむに決まってるめんたいマヨも、どちらもいいですね〜。
 あまりにもいい気持ちで、おつまみに「タコさんウインナー」(350円)、そして僕は「男梅サワー」(390円)、T氏は「白ワイン」(480円)を追加。

 

「タコさんウインナー」

 

「男梅サワー」

 

 男梅サワーが「ホワイトホース」のジョッキで来たのは、馬橋稲荷神社のごりやくに違いない!  などと盛り上がりつつ、初夏の風を感じながらのたこ焼き飲みを堪能したのでした。

 

「白ワイン」  

 

 ちなみに、T氏の頼んだ白ワインを見て、「この店の雰囲気でワインってのもおもしろいですよね〜」なんて言っていたんですが、あとで写真を見返してみたところ、店名の「わいたこ」は「ワインとたこ焼き」から来ているよう。ならば僕もワインを頼んでみればよかったー! と、今原稿を描きながら若干後悔しているところです。よし、また行こっと。

 

(第5回・了)

本連載は、隔週更新です。
次回:2024年5月17日(金)掲載予定