東京のお伊勢さま
今回からいよいよ本格的に、神社参拝&ふらり飲み「ごりやく酒」を始めていきます。
初回ということで担当編集のT氏にも同行してもらい、向かったのは、東京でも屈指のパワースポットと言われる「東京大神宮」。特に縁結びにごりやくがあるらしく、参拝客は圧倒的に女性が多いようです。なので、我々のようないい歳の男性ふたり組というのは珍しいパターンなのですが、この連載の読者さんとの出会いも「縁」ということで。
「東京大神宮」
古来より日本における特別格の宮であった「伊勢神宮」への参拝は、人々にとって生涯をかけての願いだったのだそうです。しかし、伊勢神宮があるのは三重県。簡単には行けない人のほうが多く、明治13年、東京における伊勢神宮の遥拝殿として日比谷に創建されたのが「日比谷大神宮」。その後、関東大震災を経て現在の飯田橋に移り「飯田橋大神宮」となり、戦後に名称が現在の東京大神宮とあらためられたとのこと。主祭神も、伊勢神宮の内宮と外宮と同じく、天照大御神と豊受大神。ゆえに「東京のお伊勢さま」とも呼ばれています。
という、なんだか参拝をさせてもらえるだけでもありがたい神社。境内もすごく華やかな雰囲気で、オフィス街のなかにありながら、ちょっと旅行に来たような気分が味わえてしまうのも楽しいです。
華やかな雰囲気
手水舎に浮かぶ色とりどりの花
また、境内にはもうひとつ「飯富稲荷神社」もありました。こちらの主祭神は稲荷大神と大地主大神で、芸能、商売繁盛にごりやくありとのこと。おぉ、なんとありがたいことだ!
なんだか神々しい写真になった「飯富稲荷神社」
どちらにもしっかりとお詣りをさせてもらい、境内をしばし散策。参拝後特有のすっきりした気分になったところで、いよいよ街に飲みにくりだしましょう!
導かれるように
と、ここでこの連載の内容に関するわりと重大な問題に、今さら気がつきましたよ。
基本的に、神社仏閣への参拝は、夕方以降ではなく、明るいうちにするほうが良いとされているそうなんですね。そうすると自動的に「昼飲み」が多くなる。開いている飲み屋を探す難易度が高くなる。そこ、実際に始めるまでぜんぜん気がついてなかった〜!
なんてことを編集さんと話しながら、ものの2、3分ほど歩いたところで、前方に気になる店が見えてきました。町中華風の赤いひさしに「昭和二十二年 大阪餃子専門店 よしこ」の文字。餃子飲み、いいじゃないですか。なんだかもう、導かれるままにたどり着いたような気がして、迷いなく入店。
「大阪餃子専門店よしこ 飯田橋店」
店内の様子
さてさて、ここはどんな店なんだろう? 予想に反してあまり古さは感じない店内ですが、多数のメニューが壁じゅうに貼られ、大衆的で楽しい雰囲気です。
まずは当然生ビール、それから、入念にメニューを検討する間、軽くつまめるものをと「名物! よしこの浅漬けキャベツ」を注文。
「名物! よしこの浅漬けキャベツ」(税込み 308円)※以降すべて税込み
「生ビール 中」(528円)
ではでは、連載開始を祝して乾杯〜! ぐい〜っっっと、のどを通る生ビールがうまいこと! 心配していた「罰当たりなことしてる?」的罪悪感もなく、むしろ心身がすっきりしているぶん、いつもより美味しく感じるくらいです。って、これまでもプライベートでさんざんやってきたことだし、考えてみれば当たり前か。とにかく楽しいぞ、ごりやく酒!
甘酸っぱくて、強めのシャキシャキ感があって、アクセントの生パセリの風味が絶妙に効いた浅漬けキャベツもいいですね〜。
ところでこちらの店長さんや店員さんが、みんな明るく愉快な方で、初めての僕たちにいろいろとお店のことを教えてくれます。特徴的なのが、ここは餃子専門店なので、注文をしなくても、まずはひとり1皿の餃子が出てくるシステムなんだそう。僕の知る店だと、有名な「亀戸餃子」がそのスタイルだったと思うんですが、まさしく酒場的エンターテイメントですよね。
「餃子」(1人前418円 ×2)
餃子が到着し、小さく歓声をあげる我々。さすが専門店だけあり、見るからに美味しそうに焼きあげられた餃子に、有無を言わせぬ説得力があります。2人前ってのがまた景気いい。
餃子は、薄皮で小ぶりでカリッとしたタイプ。餡は野菜が主体で、噛みしめるとほろりとほぐれ、キャベツの甘みがふわっと広がる優しい味わい。そのバランスが絶妙で、ものすごく美味しいです。で、この時にT氏が言ったひと言に、実はけっこうな衝撃を受けてしまいました。
「僕、こういう野菜餃子がいちばん好きなんですよね〜」
ハッ! と。そうか! と。僕は今まで、餃子と言えばジャンボで肉々しくてにんにくが効いていればいるほどうまいと思ってしまっていた節がある。けれども、よくよく味わってみると、40代も後半にさしかかりつつある自分にとって、ちょうどいいのはむしろこっちのタイプじゃないかと。あまりにもぼーっと生きてきてしまい、そんなことを意識したこともなかった自分が少し恥ずかしくなりつつ、「あ、僕もなんですよ〜」と相槌を打ってしまったことを、ここに告白しておきます。
さぁ、ここからはどんどん気になるおつまみを頼んで飲みましょう! 「よしこさんのミノキムチ」と「よしこ焼き(玉子焼き)」をお願いしま〜す。
「よしこさんのミノキムチ」(528円)
「よしこ焼き(玉子焼き)」(528円)
ミノとキュウリの歯ごたえのハーモニーが楽しいミノキムチ、塩気濃いめに焼きあげ、そこに甘酸っぱいたれがかかるよしこ焼き、どっちも酒がすすんじゃうなぁ。というわけで、チューハイのおかわりと、どうしても食べてみたいので「揚げ餃子」もお願いします。
「プレーン酎ハイ」(418円)
「揚げ餃子」(418円)
おー、揚げ餃子、ただでさえライトなよしこの餃子をサクッと揚げてあるので、ザ・スナック感覚! ザ・おつまみ! チューハイにばっちりだ。
はい。以上のようにごきげんに飲み食いしていたのですが、このあたりでどうしてもがまんできず、禁断の「アレ」をやってしまいました。アレとは、大の酒好きである僕がふだんならばあまりやらない「飲んでる最中に白米を頼む」という行為。なぜって、できるだけちびちびと長く飲んでいたいのに、そんなことしたら胃の容量が終わってしまうじゃないですか。
けど! だってだって、どうしてもよしこの餃子でごはんが食べてみたくて、がまんできなくなっちゃったんだも〜ん!
というわけで、餃子1人前と
「餃子にめちゃくちゃ合う白米(漬物付き)小」(275円)を追加
そもそもさ、この白米のメニュー名、ちょっとずるいよね……。え? 餃子とごはんの相性ですか? そりゃあもう、大大大満足でございました。
ちなみに店員さんに聞いたところ、こちらのお店、昭和22年創業というわけではなくて、創業者である双子の兄弟のお母様であり、大阪の鶴橋で小さな飲食店を営んでいたよしこさんが生まれたのが、昭和22年なんだとか。ふたりとも、子どもの頃からよしこさんが作る餃子が大好きで、その味を世に広めたいという想いから、餃子専門店を創業。五反田店が本店で、ここ飯田橋店ともうひとつ、青物横丁店があり、無人販売店舗も増えているほか、サイト通販もあるようですので、気になった方はぜひ。
さて、楽しいんじゃないかな? と思いつき、実際にやってみたら、やっぱり楽しすぎた、神社参拝&ふらり飲み「ごりやく酒」。次はどの街、どの神社へ行ってみようかな〜。
(第2回・了)
本連載は、隔週更新です。
次回:2024年3月22日(金)掲載予定