神社で一拝、酒場で一杯。各地の神社仏閣やパワースポットにお詣りをし、その街で出会った酒場でふらりと飲む。それが「ごりやく酒」。
オフィス街らしい神社
虎ノ門で夕方からお酒を飲む仕事があり、これはごりやく酒チャンス! と、早めに家を出ることにしました。つまり「ひとりごりやくゼロ次会」をしちゃおうというわけですね。
虎ノ門駅前
虎ノ門は日本屈指のビジネス街で、駅周辺には立派なビルが立ち並んでいます。そんな街のなかにあったのは、実に虎ノ門らしい神社でした。
今回の目的地は「虎ノ門 金刀比羅宮(ことひらぐう)」。
正面鳥居
ごらんのとおり、鳥居から社殿に向かう参道の上にビルが建っています。これは「琴平タワー」という超高層ビルで、金刀比羅宮の境内に、2004年に竣工。1階部分には社務所などの施設も入っていて、国内で初めての、神社の参道と一体型になった再開発ビルなんだそう。
裏鳥居
境内にある銅鳥居
もうひとつ珍しいのが、社殿の前にある銅鳥居。左右の柱の上部に、4つの方角を守護する霊鳥霊獣の彫刻があしらわれているんです。
左の柱
右の柱
東の「青龍」
北の「玄武」
南の「朱雀」
西の「白虎」
こちらは、文政4(1821)年に奉納された明神型鳥居で、なんと江戸時代の浮世絵にも描かれているという貴重なもの。当時の江戸っ子たちもここをくぐってお詣りをしていたと想像すると、不思議な気持ちになります。なんだか、くぐるだけでパワーがもらえそうだ。
「虎ノ門 金刀比羅宮」
虎ノ門 金刀比羅宮は、香川県にある「こんぴらさん」こと「金刀比羅宮」の御分霊を祀った神社。
万治3(1660)年に、丸亀藩の邸内社として芝の三田に鎮座。延宝7(1679)年、江戸城の裏鬼門にあたる、現在の虎ノ門に遷座。当時の江戸庶民の熱い要望に応え、毎月10日だけ、誰でも参拝できることになったそうです。もちろん、現在はいつでも参拝可能。
御祭神は「大物主神(おおものぬしのかみ)」と「崇徳天皇(すとくてんのう)」。ご神徳は、海上守護、大漁満足。また、商売繁盛や招福除災にもごりやくありとのことで、今回もしっかりとお詣りしてきました。
拝殿内
丸に「金」の文字が入るお守りがかっこいい
また、境内には「喜代住稲荷(きよすみいなり)神社」「結(むすび)神社」というふたつのお社もあります。
結神社は縁結びのごりやくがあることでも有名で、赤いひもとお守りがセットになった「良縁祈願セット」を購入し、赤いひもを専用の台に結んでお詣りするのが作法なんだとか。たくさんの赤いひもが並ぶ様はなんだかロマンチック。
こちらのふたつのお社にも、忘れずにお詣りをしておきたいところですね。
まさかの“邪悪”メニュー
それでは今回も、良き酒場との出会いを求めて街にくり出しましょう。個人的に訪れる機会が少なく、無機質なオフィス街を想像していましたが、よく考えたら需要がありまくるので、飲食店はたくさん見つかります。
そんななか、ふと目が留まったのが、入り口に鳥居があしらわれた「虎ノ門横丁」なる飲食店街。昔ながらの横丁ではなく、そういうテーマで近年作られた施設のようですが、興味深いお店が両側にずらりと並ぶ様子には心惹かれるものがあります。
「虎ノ門横丁」
なかでも気になったのが「肉十八番屋」という店。
「肉系居酒屋 肉十八番屋 虎ノ門店」
街のイメージをくつがえすほどのお得さと大衆感が、なんとも魅力的です。あと、今この文章を書いていて気がついたんですが、店名、「2×9=18」と「十八番(おはこ)」のダブルミーニングになってますね。憎めない店だぜ。
店頭の看板メニュー
さらにメニューを見ると、ランチメニューのなかに「邪悪ステーキ」「邪悪セット」なんてのがありますよ。邪悪ステーキの下に「スパイシーチキン」と書いてあるので、なるほど、たぶんこれ、ジャマイカ料理の「ジャークチキン」のことなんじゃないですかね? いや、ダジャレ好きだなこの店。
邪悪セットには、プラス150円で牛ももたたきのハーフがついてくるらしい。これはいい! 果たして神社への参拝のあとに「邪悪」なんて言葉がつくメニューを食べていいのかどうかはわかりませんが、どうしても興味があるし、これも出会いでしょう。
今日のごりやく酒の舞台、決定!
ランチドリンクメニュー
席につき、テーブルの上にあったランチドリンクメニューを見た時点で、すでにごりやくを確信しました。だって、生ビールが275円! ハイボールとレモンサワーが200円! こんなにも昼飲み向きの店がありますか!
「ランチ生ビール」(税込275円)
さっそく頼んだビールが、ちゃんとザ・プレミアム・モルツの生で、ちゃんと中ジョッキなのが最高に嬉しい。
各テーブルのこういう心遣いも嬉しい
さっそくキンキンのビールでぐい〜っとのどを潤していると、きたきた! 邪悪セットが。
「邪悪セット」(1000円)
おお、これはかなり豪華じゃないですか? ボリュームたっぷりの鶏もも肉のグリルと、ハーフといってもきちんと量のある牛たたき。それと、ごはん、漬けもの、みそ汁。ランチと考えてもお手頃だし、酒のつまみと考えたらもっとお手頃だ(酒飲みだけの謎感覚)。
ではでは、いただきましょう。
邪悪チキン
うん、やっぱりこれ、ジャークチキン風グリルチキンだ。スパイシーでピリ辛で、けれども“邪悪”ってほど刺激のある味つけではないですね。むしろ、日本人向けにマイルドにしてあるような? っていうかそもそも僕、ジャークチキンという料理自体の味をそこまでしっかり把握してないや。とにかく、皮はぱりっと、肉はジューシー。うまいです!
そのままもいいけど、オンザライスでもビールがすすむ
牛ももたたき
牛たたきは、しっかりと厚みもボリュームもあって、絶妙なレア加減と牛の風味がいいですね。舌バカの僕には解明できない、謎に深みとコクがあってまろやかなソースもいい感じです。
当然、漬けものやみそ汁、チキンの下のリーフレタスもいいつまみ。チキンは、レモンをしぼったりマヨネーズをつけたりの味変も楽しいし、後半はごはんにふりかけをかけ、それすらもつまみにしてしまいましょう。
「ジムビームハイボール」(200円)
当然ビール1杯で足りるわけもなく、ありがたいランチ価格のハイボールを追加。大満足でお会計をすると、なんと合計1475円! あれだけの料理を食べて、ビールとハイボール1杯ずつ飲んでこの値段はすごいな。
というわけで、今回も幸せな、ごりやく酒でした。
(第10回・了)
本連載は、基本的に隔週更新です。
次回:2024年8月2日(金)掲載予定