ごりやく酒 パリッコ

2024.11.22

17中延「蛇窪神社」と「つくばや」のおまかせランチ

 

 

  神社で一拝、酒場で一杯。各地の神社仏閣やパワースポットにお詣りをし、その街で出会った酒場でふらりと飲む。それが「ごりやく酒」。

 

 

2日後が大開運日!?

 

「蛇窪(へびくぼ)神社」の存在を知ったのは偶然でした。確か、他のどこかの神社のことをネットで調べていたら紹介記事がリンクに出てきて、印象的な名前が気になり、なんとなくクリックしてみたんだった気がします。
 その記事によると、蛇窪神社は東京都品川区にあって、「白蛇様」を祀る、立身出世や金運にごりやくがある人気の神社なのだとか。当然、興味を持ってオフィシャルサイトも見てみると、なんとそこに「これって運命!? おれ、白蛇様に呼ばれてる!?」と勘違いしたくなるほどの情報を見つけてしまったんですよね。
 というのが、「巳(み)の日」についてのもの。
 巳の日は、12日に一度の間隔でやってくる、弁財天にまつわる吉日。弁財天は、芸術、芸能、勝負事、学問、財運など、あらゆる運気を上げてくれる神様。巳とは、弁財天の遣いである白蛇のことで、巳の日に白蛇に願いごとをすると、弁財天に届くと言われているんだとか。
 さらに、巳の日のなかでも60日に一度だけめぐってくるのが、「己巳(つちのとみ)の日」で、これは年に6回しかない大開運日。
 そんな情報を僕が初めて目にしたのが、10月30日のことだったんですが、なんと次の己巳の日は、その2日後の11月1日! それを逃すと次は12月31日の大晦日で、その次は来年の3月。

 

なんてタイムリー  

 

 白蛇様を祀る蛇窪神社では当然この日を大切にしており、巳の日には「巳日特別祈願」、己巳の日には「己巳特別祈願」を、予約すると受けられるそう。初穂料(5000円〜お気持ちで)は必要になるものの、これもなにかの縁。思い切ってその場で電話予約をし、特別祈願も込みで、お詣りに行ってみることにしました。
 場所は、都営浅草線と東急大井町線の中延駅、JR横須賀線の西大井駅から徒歩数分。また、徒歩十数分はかかるものの、東急大井町線の戸越公園駅からのコースは、「白蛇様の戻り道」と呼ばれており(理由は後述)、余裕があればそちらからの参拝もおすすめ。

 

「蛇窪神社」

 

 神社が近づいてくると、すでになんだかにぎやかな雰囲気。境内だけではなく、前の沿道にもたくさんの出店が出ていて、参拝客がたくさん。この日は平日だったんですが、さすが己巳の日です。

 

正面鳥居

 

 

龍の像

 

 

「一粒万倍」の石像

 

 境内のいたるところにごりやくのありそうなオブジェがあったり、とても楽しい雰囲気の神社。さらに境内の中央にはステージが作られ、弁天様、白蛇様、白狐様、狸様などの姿が。どうやら正月三が日、初巳の日、己巳の日に行われる「白蛇舞」というものらしく、めでたくもユーモラスな雰囲気が参拝客に大人気です。なんだか、一足早くお正月が来てしまったよう。

 

普通にトークがうまい神様たち

 

 

白蛇舞

 

 

狸様がかわいい……

 

 と、境内を散歩するだけでも楽しい蛇窪神社ですが、まずは参拝。予約時間を待って、約30分ほどの特別祈願を無事に受けることができました。

 

社殿

 

 最後に己巳祈願守護のお札、お守り、御神米、御神酒をいただき、祈願終了。

 

本名が書かれていますが、隠すものでもないし

 

 

家でお米を炊いて食べてみたら、やたらと美味しかったです

 

 蛇窪神社の創建は鎌倉時代で、1323年ごろ。正式名称は「天祖神社」。
 御祭神は、主神が「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」。配祀が「天児屋根命(あめのこやねのみこと)」と「応神天皇(おおじんてんのう)」。 また、境内社として「市杵島姫神(いちきしまひめのかみ)」「田心姫神(たごりひめのかみ)」「湍津姫神(たぎつひめのかみ)」を祀る「白蛇辨財天社」や、白蛇大神を祀る「石窟」、蛇窪龍神を祀る「蛇窪龍神社」、稲荷大神を祀る「法密稲荷社」があります。
 これらの神様を総称して「蛇窪大明神」と呼んでいるのだそう。
 また、己巳の日には特別に「白蛇辨財天像」が御開帳され、直接お詣りをすることができるのもありがたい点。

 

「白蛇辨財天社」

 

 

ちょっとピントが合ってませんが……白蛇辨財天像

 

 その他にも、境内には見どころやごりやくスポットがたくさんありました。特にテンションが上がってしまうのが、古銭の形をした金ピカの「白蛇種銭」。

 

「白蛇種銭」

 通常は「銭回し」「白蛇清水銭洗い」という行事とセットで行い、種銭は財布などに、銭洗いした自身の硬貨は自宅に保管すると、金運がアップするというもの。お正月や己巳の日などの混雑時は、白蛇清水で清められた白蛇種銭がいただけるのみとなっていますが、それでもありがたく、当然お財布に入れて大切に持ち歩いています。

 

「蛇窪龍神社」

 

 

弁天様と蛇の像

 

 

いたるところに

 

 

ありがたい

 

 

白蛇様のモチーフが

 

 

「福活岩」「親子岩」「愚痴壺」

 

 

「満願岩」


 他にもたくさんのスポットに、それぞれお詣りの方法やごりやくがあり、どこも参拝客で大行列。はるか昔の時代から蛇窪神社は、この土地の大切な神様のいる場所であり、またエンターテイメントな場所でもあったのかな? なんて想像してしまいます。
 ところで、蛇窪神社の由緒について。
 文永8(1271)年、北条重時の五男である時千代が仏門に入り、現在の大田区に「厳正寺」を開きました。その後、元亨2(1322)年、厳正寺の僧侶がこの地にあった池の竜神へ雨乞いの祈願したところ雨が降り、それに感激した時千代の旧臣たちが、神社を勧進し祀ったと言われているそう。だから境内には、龍神様にまつわるスポットも多いんですね。
 それではなぜ白蛇様が祀られるようになったかというと、鎌倉時代、社殿の横に清水が湧き出る洗い場があり、そこに白蛇が住んでいたことに由来するようです。
 ところがいつのまにか洗い場がなくなり、白蛇はやむなく現在の戸越公園の池に移り住むようになりますが、ある日、土地の旧家森谷友吉氏の夢枕に現れます。白蛇は夢のなかで「一日も早くもとの住みかに帰してほしい」と懇願。その話を聞いた宮司が境内に池を掘り、辨財天社を建立して白蛇を祠ることにしました。つまりこれが、白蛇様の戻り道の由来というわけ。
 現在、洗い場の跡地は井戸になっていて、そこから湧き出す「白蛇清水」は、今も辨天池に流れているのだそう。

 

辨天池で優雅に泳ぐ鯉

 

 

「法密稲荷社」の鳥居

 

 

「法密稲荷社」

 

 

稲荷社内にある「水掛宝珠」

 

 境内をくまなくじっくりとお詣りして回り、最後になんとも縁起の良さそうな「一粒万倍みくじ」を購入。

 

「一粒万倍みくじ」

 

 おみくじの裏面に「超豊作」の文字が出ると、なんと金色の「一粒億倍」の縁起物がいただけるらしいのですが、当然そう簡単ではありませんでした。

 

米粒型の入れものがかわいい

 

 けど、ありがたくも結果は大吉だったし、このお米の形のおみくじ入れもじゅうぶん縁起が良さそうなので、これまた家に持ち帰って大切に飾っております。

 

 

 

神社からすぐのアットホーム酒場

 

 さて、それでは本日のごりやく酒タイムスタートといきたいところなんですが、実はすでに見つけていたんです。境内の出店で缶ビールが売られていることを。

 

しかも「キンキンによーく冷えてる」らしい

 

 となれば、そんなありがたいお酒は飲んで帰らないわけにはいかないでしょう。さらにその近くの出店に魅力的なものが。それが、1個600円の「うなむすび」。

 

「うなむすび」

 

 なんと、うなぎの蒲焼きがどーんとのったおにぎりで、ちょうどいいサイズの厚焼き玉子までセットになっています。う、うまそう……。

 

缶ビール&うなむすびを境内の一角で

 

 

いただきます!

 

 おにぎりひとつに600円はちょっと高い? と思いきや、いやいやこれが、とにかくうなぎがふっくら肉厚でボリュームたっぷり。山椒の小袋がついてくるのも嬉しく、よく冷えたビールとの相性が幸せすぎます。っていうか、こんなちゃんとしたうなぎを食べたの、いつ以来だろう……。

 以上で今回のごりやく酒も無事完了〜! と、いうわけにはいきませんよね。せっかくだから一杯やれるお店を見つけ、入ってみたい。そこで、いろいろとお店がありそう、かつ、あまり訪れたことがない中延の駅方面へ向かってみることにしましょうか。
 と、思って歩きだした瞬間、いきなりひとつのお店が気になってしまいました。

 

神社からこの距離

 

 蛇窪神社から歩いて1分もかからない場所にある「つくばや」。どうやら、夜は居酒屋、日中はランチ営業をしているお店のようですね。現在はランチ営業中で、店内の様子は見えないものの、わいわいがやがやとした活気が外にいても伝わってきます。
 悩むな〜。街歩きも楽しみにしていたんだけど……え〜い、絶対いい店そうだし、これも縁。入ってみることにしよう!

 

「つくばや」

 

 

ランチメニュー

 

 

酒類メニュー

 

 扉を開けると、そう広いお店ではないんですが、やっぱりすごい活気です。各テーブル席は美味しそうにランチを食べるグループ客で埋まっていて、蛇窪神社へのお詣りの帰りにここに寄るのを楽しみにしている人も多いのかもしれませんね。僕は、運よく空いていたカウンター席に着くことができました。
 カウンターのなかも、ご家族経営なのでしょう。数人の店員さんたちが明るく働かれており、そこへお子さんと思われる小学生が帰ってきたりするアットホームな様子、見ているだけで幸せな気持ちになってきます。
 お酒類が豊富なのも嬉しく、お、大好きなホッピーがあるぞ、と思いきや、その下に「トマッピー」(税込630円)、「中トマト」(330円)なんてメニューがありますね。どんなものか気になって聞いてみると、トマトのお酒をホッピーで割るものだそう。なんだかおもしろそうだし、それをお願いします。

 

「トマッピー」

 

 ごくりと飲んでみると、おぉ、なるほど、華やかなトマトの香りに、ほんのりとした甘み。ホッピーの炭酸感ともよく合って、いいな、これ。色が赤いわけじゃないのに、こんなにもトマト風味なのもおもしろい。あとで検索してみたんですが、ナカの正体は「ラ・トマト」というトマトリキュールだと思われます。
 それから料理。現在頼めるのはランチメニューのみで、どれもとても魅力的なのですが、“酒のつまみ” という視点から見ると、やっぱり「おまかせランチ」(1,200円)になるでしょうかね。「お刺身・フライほか」という、盛りだくさんな予感からして。

 

「おまかせランチ」

 

 というわけで到着した、おまかせランチが、やっぱりいい! 実はメニューを見たとき、「大根とイカの煮物ランチ」も渋くていいな〜なんて思ってたんですよね。嬉しいことに、その煮物がひと口サイズでのっている。さらに、揚げ餃子や明太子、サラダになめこのみそ汁。どれも妙に美味しそうで、顔がにやけちゃいますね。

 

会いたかった

 

 

いい仕事してくれそう


 加えて主役級の2トップが、まぐろ刺とアジフライですよ。

 

まぐろ刺

 

 

アジフライ

 

 まぐろは新鮮そのもので味が濃く、トマッピーがぐいぐいすすむ。肉厚ふっくらのアジフライも言わずもがななんですが、こちらはソースたっぷりの上にさらにタルタルソースをかけてしまい、白米と食べるのも気絶しそうな美味しさ。

 

そりゃうまい

 

 その他のおかずたちもきっちりと美味しく、なんだかハマってしまったトマッピーのナカをおかわりしつつ、参拝後の幸せな飲みタイムを満喫させてもらいました。

 

いつものホッピーよりもさらに飲みやすいかもしれない  

 

 来年は巳年ということで、思いがけずばっちりなタイミングで訪れることのできた蛇窪神社。予定の合う己巳の日に、ぜひまたお詣りに来たいし、そうでない日にゆっくりと参拝するのも良さそうだなぁ。

 

(第17回・了)

 

本連載は、基本的に隔週更新です。
次回:2024年12月13日(金)予定