午前9時頃に起床。昨晩テキットから戻ったのが午前1時過ぎ。時差ボケは治ってきたものの身体と頭が重い。
今日はメリダのシネマテークでの上映日。上映自体は19:00からはじまるので、昼間はビーチに行くことになった。アウグストの家から車で40分ほどのプログレソという町に出かける。
インスタで豚が海を泳いでいるピッグビーチの画像を見たとマルタ。豚に特に興味はなかったが、まずはそちらに到着。イースター期間のため人が多い。日本の観光地のビーチと変わらない。
人が群れている場所に豚さんの囲いがあり、豚さんたちはお昼寝をしていた。大きな豚さんが8匹、小さな豚さんが3匹見える。おそらく時間がきたら人の中に放たれるのだろう。人間に飼われるというのは大変だなと思う。お構いなしにずっと日陰で寝ていてほしい。豚さんを追っかける気にはなれなかったので、ビーチに飾ってある豚キャラクターの写真を撮った。
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違うビーチへ。アウグストおすすめの人気のないビーチは気持ち良かった。空と海の青さに、果て無さそうな水平線に、世界の大きさを感じ心が和んだ。
海岸沿いの海鮮食事処で魚のフライ、シェビーチェ、海老のスープをいただく。午後2時までにはメリダに帰って、上映時間までに原稿を書くつもりが、結局テーブルに着けたのは午後4時近く。テキットでの上映会がどんなものだったか、急いで記憶を巡らせていく。
メリダのシネマテークは、毎日営業している映画館ではなく、イベントや映画祭があるときにのみ開くらしい。街の中心に位置している。シネマテークでの上映に関わる広報や調整を担ってくれたお二人に挨拶し、お礼を伝えた。
お客さんの年齢層はテキット上映時より上で、35人くらい。4/20に二度目の上映があるが、そちらも同じくらいのチケットが出ているらしい。映画祭での特別上映以外では、アウグストの出身地であるメリダで初上映となった。彼が教えている映画を学ぶ生徒も何人か来てくれている。アウグストがいかにこの映画にとって大事な人物かを上映前に少し話し、映画がはじまった。
上映後も3人で登壇しQ&A。ここでも「セノーテを作る際に最も困難なことはなんだったか」「誰が水中撮影をしたのか」という質問がでた。ご年配の女性からは「セノーテが地獄に繫がっているようにも見えたが、日本にもセノーテのようなものがあるのか」。初期の初期、セノーテのことはマルタに教えてもらっていたが、渡航やリサーチ資金を貯めるために1年ほど日本で資料を読んだりしている間、日本とメキシコを地下で繫げることはできるだろうかと考えていた。
セノーテ（地下の泉）がもつ神話的な側面と、日本の黄泉（地下の泉）のイメージはそう遠くないように思えたから。二つの国を地下で繫げる試みは、じぶんが興味をいだいている集合的無意識や集団的な記憶に対するアプローチにもなる。実際にセノーテに訪れてみて、現地でリサーチを進めるうちにそのアイデアは自然消滅していったが、質問を受けてじぶんでも久しぶりに思い出した。
「この映画を観ていると、見てるものがすごく身近なものに感じたり、でも同時にとても遠くのことのような気もして不思議。どうしてそんな感覚になるんだろうと思うんだけど、どう思う？」
じぶんにもわからないが、そう感じてもらえて、なんだか嬉しい。
「サウンド・デザインが好きなことが伝わってくる。私もセノーテにダイビングするから、美しさも、怖さもよくわかる」
メリダに暮らす録音技師さんから声。
「私もメキシコにルーツがないのだけど、あなたが遠くから来てもじぶんの体験に誠実であれば、セノーテやマヤに関わる映画を撮れると思ったと聞いて、しかも携帯で撮ったと聞いて、励まされた」
この方は、日本人とアメリカ人の両親をもち、今はメリダで暮らしているとのことだった。最近はじめて短編映画をつくったらしい。
「50以上のセノーテに潜って、なにを学びましたか？」
この質問にはどきっとした。確かに多くのセノーテを訪れたが、じぶんがなにを学んだかを考えたことはなかった。いろんなセノーテを体感し、それが積み重なれば、身体になにか溜まっていくだろうとは思っていたが、じぶんはなにを学んだだろう。答えられない気がしたので、なにも学んでいないかもしれない、と返答したら、他の観客の方が「泳ぎを覚えたじゃない！」と言ってくれた。
シネマテークでの最後の感想は日本語で行われた。映画に対するあつい想いと感謝の気持ちを、はっきりとした声で、でも緊張した面持ちで、伝えてくれる。改めて、今回のように多くの声を聞ける機会をいただいていることに、じぶんも感謝の気持ちが溢れる。
アウグストやマルタの友人、観客の方たちも混じって、みんなでビールを飲み解散00:00。
