薄暮の光でセノーテを ― ユカタン半島上映記 小田香

2023.4.17

07ショセンでの上映と休日 4/14~4/15

 

セノーテOxman(オクスマン)

●ショセンでの上映

 9時起床。マルタとYと朝食のカフェに。道中、薬局で下痢止め薬を購入。Yは順調に回復している。途中からグスタボ、アウグスト、ソフィア(アウグストの彼女)と合流。じぶんは書きものをし、マルタはうろうろしながら各所に電話。昼を簡単に済ませショセンへ移動。

 ショセンは2017年〜2018年の間に3度訪れた。バヤドリッド周辺のセノーテを巡っているときに、マヤの文化や風習が色濃く残る村としておすすめされたのがショセンだった。映画の中で大事な役割である「声」役を担ってくれたアラセリがいる。終盤に出てくる声の主もショセンに住む男性。この二人に見てもらえたら嬉しいなと思っていた。

 だが、ショセンでガイド役だった人はショセンでの活動をやめ、メリダに引っ越したらしい。アラセリの家を自分たちだけで探せるか不安もあったが、ショセンの上映場所(村の中心にあるバスケットコート)から30分ほど歩いたら見覚えのある敷地に着いた。アラセリとご家族たちがいる。

 ご協力していただいた映画が完成したことをお伝えすると、なんとなく距離を感じた。最後に訪れてから4、5年経とうとしている今、ある程度のぎこちなさや距離はあるだろうとは思うが、久しぶりということが理由ではない気がする。

 なんだろうと思いつつ、上映時間も迫っているのでバスケットコートに戻り、もうひとりの声であるドン・ホアンのお家に向かった。お孫さんが言うには、映画を観るためにもう家を出たという。観ていただけそうでほっとした。

 19:00ごろから映画がはじまった。アラセリのお家を目指しつつ、チラシ配りをしていたときには、あまり人気がなく、出会っても目が合わない人が多かった。シカンとは村の雰囲気も人々の感じも全く違う。注意深いと言うと変だが、こちらの様子をみつつ応対してくれているのを感じた。だけどぽつぽつと人が集まってきた。150人から200人くらい。子どもと女性が圧倒的に多い。役場の人曰く、ショセンだけでなく、近隣の村の人たちも来ているとのこと。

 上映前挨拶を終え、少ししたらドン・ホアンが到着した。ご健在。映画終盤に、セリフが出てくることを伝え、席にご案内する。じぶんとYとマルタは、バスケットコートに座って、後ろから上映の様子を見守った。地上では野外上映、見上げると夜空。星が輝いている。
 アラセリは来ていなかった。
 ホアンとアラセリ、ショセンでご協力いただいた方々に感謝を述べ、上映会が終わった。ホアンは映画を誇らしく感じてくれたようで、有り難い。

 バヤドリッドに帰る道中、まだアラセリとご家族のことを考えていた。ガイド役のひとがいなかったからだろうか。迷惑だったろうか。アウグストは、「変だったね。前はご飯をつくってくれたり、色んなものを見せてくれたり、友好的な雰囲気だったけど。アラセリの一家はショセンのなかでも昔ながらの暮らしを留めているから、マヤに興味があるひとが訪ねてくることが多いと思う。相手をするのに疲れたか、嫌な体験をしたのかもしれない」

 この何年かの間に、なにかあったのかもしれない。じぶんもそう思った。我々もその要因のひとつであるかもしれない。物珍しい眼差しで彼らを見ていなかったか。ひとりの人間同士として、敬意を払えていただろうか。

***

 ホテルに戻りドミノ・ピザをテイクアウトして食べた23:30。22:00を過ぎるとピザかハンバーガーしかない。

 マルタと一緒にタクシーでTOTOのお二人の泊まっている場所へ移動24:00。
 ビールとメスカルをご馳走になる。1年のうち5ヶ月はメキシコ中をずっと巡業している移動型映画館のこと、普段のプログラミング、メキシコ北部と南部の違い、上映料をとらず助成金やスポンサーをつけることで成り立たせていることなどを伺った。なぜか忘れたがフェミニズムの話や、ナルコスの話にもなった。もっといろいろ知りたかったが、途中で力尽きた。かなり呑んだが、全く酔わなかった。
 ホテルに戻り就寝28:00。

 

●休息日

 午前10時いつものカフェでスムージーを身体に入れた後、バヤドリッドのお土産屋さんをYと見て回る。手縫いの刺繍が入った洋服やハンカチがかわいい。Yは元気。じぶんはぽーっとしている。お店の方がみなあたたかな感じなのでほっとできる。旅の半ばに来てはじめて観光的なことをしている。

 マルタたちと合流。アウグストの具合が悪いらしい。Yと同じような症状だが、顔をみるとかなりきつそう。気分が良くなるまでホテルで休んでもらう。

 セノーテOxman(オクスマン)に向かう。Oxmanはバヤドリッド郊外のハシエンダの中にある。撮影時、もっとも美しかったセノーテのひとつ。6年前とは違い、バー、レストラン、更衣室やトイレ、ハンモック、プールが完備された観光地になっていた。飛び込みをしている人たちのつくる音が煩い。

 変化著しいが、Oxmanに浮かぶと、自然への畏怖を感じた。

***

 サラエボ学校時代の後輩、クリスチャンがメキシコ・シティから会いに来てくれた。いまは上映活動をしながら、カラー・コレクションの仕事をしているという。すこし復活したアウグストも一緒に、グスタボ、マルタ、Y、みんなでユカタンの伝統的な食事ができるレストランにいき夕食。ピニャコラーダ、モヒート。

 マルタが踊りたがっている。じぶんは気が乗らない。でもクリスチャンも来てくれているので、バー兼クラブ?的な場所にいった。コロンビアバンドの生演奏。ぐっとショットをのんで、ちょびっとだけ身体を揺らした。

 力尽きたので先にホテルへ帰る24:30。 
 『セノーテ』撮影でもお世話になり今も使用している携帯が水没(ウォータープルーフのはずなのに)、どうしよう25:00。