どうも、神父です。 大西勇史

2020.12.30

30薄曇りの年の瀬だけれど

 この原稿を書いているのは、2020年12月25日の16時だ。クリスマスおめでとうございます。24日の夜にミサをして今日も朝からミサ、午後には近くの心療内科に呼ばれてミニ講演会をしてきた。帰ってきて、メールの返信などを終えて今である。

 今年は、NHK「サラメシ」出演などもあり、インスタグラムのフォロワーさんが増えた。インスタグラムに「クリスマスおめでとうございます」と投稿したところ、「クリスマスって『おめでとう』を言う日なんですね、初めて使いました」という趣旨のDMが多数寄せられた。そうだった、僕はそのことを説明するのをうっかり忘れていた。

 教会では、クリスマスは救い主の誕生をお祝いする行事で、「おめでとう」と言う。教会では、と書いたけど元々がイエスの誕生を起源に始まったお祭り文化だ。信徒でない方は何て言うんだろうと聞いてみたところ「メリークリスマス」や「ハッピーホリデー」だそう。なるほど、これらは僕も使ったりするが、気持ち的には「おめでとう」が一番しっくりくる。ちなみに「メリークリスマス」のメリーは「楽しい」という意味らしい。なのでメリークリスマスは「楽しいクリスマスを」だ。

 そしてもう一つ、24日の夜に「クリスマスおめでとう」と投稿したら「今日はイブで、明日がクリスマスなのでは」と連絡をいただいた。そうか、世の中では「クリスマス」は25日で、24日はイブなのかとなった。これについても簡単に書いておく。そもそも、キリスト教では教会暦という暦があり、それを基準に僕たち神父や信徒、教会の行事は動いている。その暦では、日没から翌日の日没までが一日となる。なので、24日の日没、みんなが今夜はイブだねと言っているタイミングはもう25日がスタートしていて、クリスマス当日となる。お分かりいただけるだろうか。だから教会では、24日の日没後にミサを捧げ、クリスマスを祝うことになっている。

 

 

 普段なら、クリスマスミサは「本物のクリスマスをぜひ味わいに来てください」「クリスマスは教会で過ごしませんか」といったお知らせを幼稚園や市の広報紙に載せたりするのだが、今年は新型コロナウイルス感染対策のため、特に告知をしていなかった。

 それにもかかわらず、当日は普段の倍以上の方たちがミサ来てくれた。しかし、大勢で一箇所に集まることはできないため、屋外や別室でミサに参加してもらったりと、みなさんの協力によりミサを執り行うことが出来た。参加された方の約半分が信者ではない方たちだったのには驚いた。と、同時に、コロナによって先が見通しづらくなった今年こそ、本当にクリスマスという希望が多くの方に必要なんだと感じた。ここに集まってくださった方々は「救い主が誕生した」という希望に触れたくて来てくださっているのだ、そう思った。聖書にも記されているイエスの誕生時、大天使の知らせに導かれてやって来た羊飼いや、暗闇に輝く大きな星の徴しを見て駆けつけた学者たちのことを思い出していた。

 今年は僕だけではなく、皆さんにとって本当に大変な一年になったと思う。特に、楽しみにしていた行事や、学校生活そのものに大きな影響が出た学生たちのことを思うと心が苦しくなる。もちろん大人たちだって相当苦しかったと思うが、僕たち大人が発する「コロナだから仕方がない」という言葉に、彼らは声をあげることすらしづらかったのではないか。だからと言って、個々のリクエストに対して僕自身が何か具体的な方策を持っていわけではないので、せめて神父である自分に出来ることをと考え、毎日「このコロナ禍にあって、希望することさえも抑制されてしまっている若い人たちのために」という意向を加えて、祈っている。

 僕の活動はというと、楽しみにしていたイベントや、呼ばれて出ていくような仕事自体はほぼなくなって残念ではあった。しかし、かわりに時間が出来て、一人一人の方とゆっくり腰を据えて関わる時間が増えたのは良かったと思っている。その結果と言うとあれだが、来年の春には5名の方が洗礼を受け、新しく教会の仲間になってくれる。昨年は1名の方の洗礼があったのだが、それも僕のいる教会では1990年ぶりのことだったそうで、奇跡と言って信者のみなさんが喜んでいた。来春、5人も仲間が増えると教会がひっくり返るんじゃないかと思って楽しみにしている。

 どうやら、コロナ禍のこの状況は劇的に好転するということはなさそうだ。世の中が、薄曇りなこんな状況だからこそ、神父は希望を語らなければならないと感じている。もちろん大きなことは出来ないし、するつもりもない。自分の今いるこの場所で、周りの人たちにとっての光になれたらと願っている。このコロナ禍にあっても、神様は僕たちを守り導いてくださっていると僕は、信じています。来年もなかなか難しい年になるかもしれませんが、共に励まし合いながら乗り越えていきましょう。今年もこの「どうも、神父です。」を読んでいただき、ありがとうございました。良いお年をお迎えください。

 

 

(第30回・了)

 

本連載は隔週更新でお届けします。
次回:2021年1月13日(水)掲載予定