どうも、神父です。 大西勇史

2021.1.13

31教会喫茶、オープン(吹雪の日に)

 あれは、地元の専門学校に入学した2000年代のはじめの頃のことだ。僕が入学した学校は、医療系の国家資格が取れるということもあり、一旦社会に出てから資格取得を目指して入学する人も多く、クラスの半分くらいは社会人だった。

 5つ、6つ歳の離れた同級生たちと仲良くなり、ある日そのうちの1人が僕をカフェに連れて行ってくれた。僕は18歳で、友達と車に乗って夜に出かける、というだけで刺激的に感じる年頃だった。さらに行く先は、流行りの「カフェ」である。「カフェ飯」と呼ばれる言葉に象徴されるように、当時は全国各地におしゃれなカフェが続々とオープンしていたのだ。

 向かった先のカフェは、二階建ての小さな一軒家を改装したものだった。DIYで仕上げたと思われる温かみのある内装で、二階に上がるとソファ席が三つ。ソファもそれぞれ異なるデザインのものだった。それまで部活のチームメイトと近所のラーメン屋くらいにしか行ったことのない少年だったので、友達が一緒とは言え、なんだか場違いなところに来てしまったような感じがして、ドキドキしながら階段を上がった。

 席につくと小さなフォトブック式のメニューを渡された。メニューを見ても、果たしてどんな料理なのかあまりよく分からない。だけどそう告げるのは恥ずかしいから、これは外せないでしょうと知ったようなふりをして「僕は、ミートソースご飯にする」とドヤ顔で言い放った。

 年上の友人は「いいね、それおいしいよ」と言ってくれたので安心したが、続けて「サラダは何にする?」と聞かれてパニック。「うぇ? サラダ?」。

 今なら分かる。メインはそれぞれ好きなものを頼んで、サラダはシェアしましょうと。しかし、ラーメン定食しか頼んだことのなかった当時の僕は「ん? サラダいるかなぁ」と思った。結局、チキンサラダをシェアすることにして、飲み物はジンジャーエール(辛口)を頼んだ。サラダは、酸っぱいドレッシングがかかったレタスの上に、オレンジ味のにんじん(後にそれがキャロットラペであることを知る)、そしてカレー味(正しくはクミンである)のチキンソテーが載っていた。サラダといえば青紫蘇ドレッシングかごまドレッシングで食べるものだと思っていた僕は「これサラダって言うんだ」と大層びっくりした。ジンジャーエールもミートソースご飯も、食後に勧められて頼んだキャラメルラテもとにかくみんな美味しかった。僕は、そのカフェが大好きになった。

 それから2年後に、僕は島根から上京するのだが、その時はその店のオーナーに東京でおすすめのカフェをリストにしてもらったりして、上京したら全部回ってそのうちのどこかでアルバイトできたら最高だなと考えていた。実際は、高円寺のガード下の居酒屋でアルバイトをすることになったんだけどね。

 僕のカフェ好きは神学校時代も続き、一年目の那須では住んでいるところから40分かけて、「1988 SHOZO CAFE」に通ったりしていた。東京の神学校の最寄り駅である西武新宿線の武蔵関には「実川珈琲」というかっこいいお店があり、ほぼ毎日そこにいて、本を読んだり、雑誌を見たりしていた。広島に移ってからは今はなき「u-shed」というおいしいコーヒーとフードのあるお店に随分入り浸った。ここは人やモノ、イベントなどが集まるハブのような場所で、あの時期、あそこにいることができたおかげで出会えた人、学べたことが沢山あったと思っている。

 来る三月で神父になって丸3年になる。

 様々なところで「教会に行ってみたい」と言われることがあり、その都度「ぜひ、来てください」とか「お近くの教会に行ってみてください」と伝えてきた。中には「神父と話してみたい」とか「懺悔を聞いてほしい」という方もおられた。そういう方々にも「いつでも来てください」とか「連絡をくだされば、いつでも大丈夫です」と返事をしてきた。だけど、それっきりでなかなか実現することはなかった。「教会に行く、神父に会いに行くだとなんだか大袈裟だよな。もっと軽くてポップなきっかけがあればいいのか」と感じた僕は、「○曜日の○時~ここでコーヒーや紅茶を淹れてます。教会や神父に興味のある方は、どなたでも遊びに来てください」という活動をしようと決心した。

 しかし、「活動」というと固い。場所の名前も欲しいし、うまくそれらを言い表すコピーが欲しいなと考えていたところ、友人でコピーライターの大塚ミクさんが、個人でもお願いできる「言葉の店」を始めたのでそこに発注した。後日「教会喫茶」という名前を見たときに「あぁ、これだ」と思った。ここから続けていくという意志を刻んだ「since2020」もいい。コピーの言葉も広く大きく、でもぼやけないようにという無茶なオーダーに応えてくれたものだった。これはロゴが必要だと思い、前述の「u-shed」で出会ったyunosukeくんにお願いした。これまでも彼には叙階式やパパ様来日の際に、グッズのデザインをお願いしていたのだ。年末の忙しい時期もかかわらず、ミリ単位の調整もしてくれ、長く使えそうな素敵なロゴが完成した。

 さぁ、やろう。ということで、このご時世ではあるが、すでに「教会喫茶」を2日間ほどオープンさせてみた。初日の今月7日は、今シーズンいちの大寒波の日だった。相変わらず、持ってるなオレと独り言を言いながら、こんな日にさすがに誰も来ないだろうと思っていたら、まさかの4人も来てくださって感無量だった。

 

 

 2日目は一都三県に緊急事態宣言が出た8日。そんな日に教会で喫茶スペースを開くなんてめちゃくちゃ時代に逆行している。人の少ない田舎だから、感染対策に気をつけながら、そろりそろりとやって行こうとその日もオープンさせたところ、結局6人の方が来てくださった。

 この10名の方々は、みんな信者さんじゃないのだからびっくりである。インスタを見てきてくれた方や、お友達の紹介でということだった。それに「『教会喫茶』やります」とインスタで告知したとき、フォロワーのみなさんから応援コメントの数が驚くほどあり「この場所で僕が教会喫茶をやることは、遠く離れた方の希望にもなるんだ」と思わされた。

 昨年の暮れに、希望の星になりたいと大層なことを書いた。すぐに綺羅星に自分がなれるとは考えていないが、その第一歩がこうして思わぬ形で実現した。あとはこういった活動をコツコツとやり続けるだけではないかと思う。やり続けますので、どうか遠くからでもいいので、見守っていてください。そして、コロナ禍が落ち着いたらぜひ「教会喫茶」にお越しください。一緒にコーヒーでも飲みましょう。

 

 

(第31回・了)

 

本連載は隔週更新でお届けします。
次回:2021年1月27日(水)掲載予定