亜紀書房の本 試し読み あき地編集部

2021.10.6

21及川健二編『本当に野党ではダメなのか?』——江田憲司「立憲民主党」代表代行に聞く



アベノミクスであなたは豊かになりましたか?
なぜ賃金がずっとあがらないままなのでしょうか?
日本はなぜ景気が浮上しないのでしょうか?

野党の経済政策の達人たちが、その疑問に答えます。
〈野党の主張に耳を傾けるインタビュー集〉



野党の経済政策のポイントを網羅した『本当に野党ではダメなのか?』
一部内容を抜粋し、試し読み公開します!

私たちの生活そして未来を託すべき政党はどこか——
来る総選挙(10月19日公示・31日投開票)に備えて

知るべき情報がこの一冊に!

 



経済政策担当の江田憲司「立憲民主党」代表代行に聞く
「分配なくして成長なし、一億総中流社会の復活を!」

 

――消費税減税はどのように行いますか? 財源はどのようになさいますか?

江田:野党は民主党政権時代に、一六兆円も一七兆円も特別会計の埋蔵金やムダ遣いの解消で財源は出ると言っておきながら、結局出なかったじゃないか、と。選挙になると、また、ああいう甘いことばかり言うのか、と批判されかねませんから、今回はきっちり財源を出します。はっきり言いましょう。立憲民主党は、増税を訴えます。これはのび続ける社会保障費の財源を消費税に求めるのではありません。税金には、法人税もあれば、所得税もある。まずはこちら、私が予算委員会でずっと出してきた財務省の資料を提示します。


 法人税は今、国税で二三・四パーセント、地方税を合わせると三〇パーセント弱です。税率は、大企業も中小企業も一律です。しかし、実際に払っている法人税の額をご覧ください。一〇〇億円以上の超大企業が法人税の負担率が最も低いでしょう。一〇〇〇万円以下の中小零細企業も一三・五パーセントを負担しているのに、超大企業が一三パーセントです。これっておかしすぎませんかと、みなさまに申し上げたい。一億円から一〇億円以下の中堅的な企業が二〇パーセント近くと、最も多く負担している。
 なぜこんなことが起きるのか。租税特別措置、いわゆる政策減税というのがありますね。省エネルギー投資をしたら税金まけましょう、研究開発投資をしたらまけましょう、外国に子会社があって、そこからの益金が入ってきたら、それもまけましょうと、いろんな優遇措置がある。それが一番適用されるのが超大企業だから、結果的にどんどん税金が減っていき、こんなことになっているのです。また、誰でも知る超大企業は、法人税を払っていない。これにもっと国民は怒りましょう、と私は言っているのです。我々は何も大企業をいじめようというんじゃない。大企業は利益を出しているし、税金を負担する能力も高いのだから、応分の負担はしてくださいと申し上げたいだけです。「財政が厳しい」と言うなら中堅企業よりは、せめて負担していただけませんかと言っているだけなのです。そこで我々は今回、規模にかかわらず一律三〇パーセント弱の法人税を、所得税と同様にするよう提案しています。所得税の場合、所得が増えれば増えるほど税率が高くなりますよね。最高税率は四五パーセントです。この累進税率を法人税にも適用しようというのです。現在一律三〇パーセント弱のところを、規模に応じて低いほうから一〇パーセント、二〇パーセント、三〇パーセント、四〇パーセントにする。超大企業には四〇パーセントが適用されるので増税になりますが、中小零細企業には一〇パーセントが適用されますから減税になります。政権を取らないと正確にはわかりませんが、我々の試算では、トータルでは数兆円の増収になるんです。だから不公平な優遇税制を見直していけば、消費税で取らなくても税収は上がります、というのが申し上げたい一点目です。
 もう一つが所得税についてです。このパネルも私、何度も予算委員会で出しているのですが、メディアが一行一秒も報じない。なんでしょうね。


 この折れ線グラフでは、所得が上がれば上がるほど、所得税の負担率が上がっていっていますよね。累進税率ですから、年収に応じて負担率は上がる。なのに年収一億円を超えると、下がっているでしょう。なぜ下がるのか。点線で記した株式等譲渡所得の占める割合にご注目ください。一億円を超えるお金持ちは、たいてい株で儲けているんですよ。財務省資料によると、所得が増えるにつれ、株取引の割合が上がってきているでしょう。にもかかわらず所得税は、たった二〇パーセントしかかかってない。今の所得税の最高税率は四五パーセントですが、昔は七五パーセントも取られていました。さすがにそこまでの高税率だとお金持ちが海外に逃げてしまうという議論があり、どんどん最高税率を下げてきた歴史がある。その結果の最高税率四五パーセントなのに、株で儲けた人だけは、なんとその半分以下の二〇パーセントしか払っていない。結果的に年収一億円を超えると、むしろ所得税の負担率が下がることになっている。これもおかしいでしょう? もっと怒りましょうよ、国民のみなさん。我々の提案は、あまり上げるのもお金持ちいじめになりますから五パーセント程度でいい、それくらいは最高税率を上げさせてくださいと。お金持ちの所得というのは桁が違いますから、五パーセント上げただけでも大きな増収になる。株式分離課税という金融所得課税にたった二〇パーセントしかかかっていないというのは、国際的にも異例です。ヨーロッパ諸国もアメリカも、金融所得の税率は三〇パーセント前後です。だからまずはこの二〇パーセントを、国際標準並みの三〇パーセントに上げましょう。その上で株取引などの影響を見据え、必要であれば三五パーセント、四〇パーセントまで上げることも検討しましょう、と。

 

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江田 憲司(えだ・けんじ)
小選挙区(神奈川県第八区)選出、衆議院議員。立憲民主党
一九五六年岡山県生まれ。東京大学法学部私法学科卒業、通商産業省入省、米国ハーバード大学国際問題研究所フェロー、内閣副参事官、通商産業省経済協力調整室長、通商産業大臣秘書官、内閣総理大臣秘書官、桐蔭横浜大学法学部客員教授となる◎みんなの党幹事長、結いの党代表、維新の党代表、民進党代表代行を歴任◎著書として『政界再編』『財務省のマインドコントロール』『首相官邸』などがある。当選六回

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《『本当に野党ではダメなのか?』試し読み》
大門実紀史「日本共産党」参院国対副委員長に聞く
大塚耕平「国民民主党」代表代行に聞く
大椿ゆうこ「社会民主党」副党首に聞く

 

 


本当に野党ではダメなのか?——
野党が掲げる成長のための経済政策
及川健二 編 税込1650円


【目次】
■まえがき
■経済政策担当の江田憲司「立憲民主党」代表代行に聞く
大門実紀史「日本共産党」参院国対副委員長に聞く
■藤田文武「日本維新の会」国会議員団広報局長に聞く
参議院国家基本政策委員会委員長の大塚耕平「国民民主党」代表代行に聞く
非正規労働者出身、大椿ゆうこ「社会民主党」副党首に聞く
■元金融マン、北村イタル「れいわ新選組」衆議院東京都第二区総支部長に聞く
■浜田聡、旧「NHKから国民を守る党」政調会長に聞く
■落合貴之「立憲民主党」政調副会長に聞く
■浅田均「日本維新の会」政調会長に聞く
■政界を引退した亀井静香、元金融相に聞く
■今や国是となった積極財政。次なる論点はその金額だ。――池戸万作
■あとがき