亜紀書房の本 試し読み あき地編集部

2021.10.13

24及川健二編『本当に野党ではダメなのか?』——大椿ゆうこ「社会民主党」副党首に聞く



アベノミクスであなたは豊かになりましたか?
なぜ賃金がずっとあがらないままなのでしょうか?
日本はなぜ景気が浮上しないのでしょうか?


野党の経済政策のポイントを網羅した『本当に野党ではダメなのか?』
一部内容を抜粋し、試し読み公開します!

私たちの生活そして未来を託すべき政党はどこか——
来る総選挙(10月19日公示・31日投開票)に備えて

知るべき情報がこの一冊に!

 



非正規労働者出身、大椿ゆうこ「社会民主党」副党首に聞く

「労働者の使い捨てを許さない!
貯め込んだ内部留保を財源に、消費税を三年間ゼロに」

 

――コロナ禍で明らかになった日本の問題、とりわけ非正規雇用の女性にかかわる問題点について教えてください。

大椿:昨年四月七日に一回目の緊急事態宣言が発出され、ステイホームが呼びかけられました。急激に在宅ワークが進んだかと思えば、学校の休校に伴い両親のどちらかが仕事に行けなくなり仕事を辞めざるを得ないなど、国民は大きな変化を強いられました。飲食業・宿泊業・小売業などサービス業が大打撃を受け、非正規雇用労働者を中心に雇用情勢が急激に悪化をしました。内閣府男女共同参画局が二〇二一年六月に作成した「男女共同参画白書令和3年版」によると、緊急事態宣言が発出された二〇二〇年四月の就業者数の推移を見ると、前月の三月と比べ、男性が三七三七万人から三九万人の減少なのに対し、女性は三〇〇〇万人から七〇万人の減少で、女性の減少幅の方が圧倒的に大きいことがわかります。繰り返しますが厚労省が今年七月一三日に発表したコロナウイルスの影響により解雇・雇い止め(見込みを含む)された人数は、一一万三二六人。その中心が非正規雇用の女性たちだと言われています。これは労働局やハローワークが把握している人数に過ぎないので、実際にはもっと多いでしょう。
 この間何度か、労働・生活相談のホットラインを開設し、相談員として相談に当たりました。私と同世代か少し上の五〇代位の非正規雇用の女性たちからの相談が多いという実感を抱きました。複数の仕事を掛け持ちしながらコールセンターで働いていた相談者の女性に、「社会に出た時には就職氷河期だったロストジェネレーションです。社会から、非正規の仕事ばかりをしてきたあなたが悪いと言われているみたいだ」と電話口で号泣された時には、私も胸が詰まりました。まるで自分の叫びのようでした。
 シングルマザーの方からの相談も数件受けましたが切実でした。所持金が数千円しかないと言うのです。貯蓄も十分になく、仕事を失った途端に直ちにくらしが成り立たなくなるのです。コロナ禍の前から、ギリギリのところを綱渡りしながら暮してきたことが窺えました。
 街頭に立って宣伝活動を行っていた時、一〇代後半か二〇代前半の女性から相談を受けました。「親元を離れ、飲食店でのバイトを掛け持ちし一人で暮してきたが、シフトが減り、月の収入が一〇万もない。貯金を切り崩しながら暮しているが、もう限界だ」という内容でした。生活保護を勧めましたが、虐待を受けていたようで、家族との連絡は一切断っていると話してくれました。「扶養照会が必要だから、生活保護は嫌だ」と言うので、まずは住宅確保給付金の申請を勧めたこともありました。助けを求められる十分な人間関係もない若い彼女には、あまりにも過酷な状況です。
 雇用の問題だけでなく、DV相談件数(前年度比、約一・六倍)や女性の自殺者数(前年差、九三五人増)も増加しています。コロナ禍の影響が、男性よりもさらに女性に大きく、複雑に_表れていることが見えてきます。そもそもこれまで問題としては認識されていないから、放置されてきた課題が、今回のコロナ禍で健在化したのだと思います。雇用の問題はその最たるものです。
 これまで非正規雇用は、家庭補助的な仕事と言われてきましたが、今や家計を支える重要な収入源になっています。今は家族がいますが、シングルで非正規雇用だった時、このまま歳をとっても非正規雇用で働き続けるとしたら、私の将来はどうなるんだろうと漠然とした不安が常にありました。その先に、時々孤独死する自分の姿が見えるんです。一日八時間働いても年収が二〇〇万円以下、日々の暮らしに汲々とし、将来設計もできないような働き方はおかしいじゃないですか。たとえ結婚をしなくても、女性が一人でも安心して生涯を送れるような働き方や生き方ができない社会はおかしいです。日本社会に巣くう性差別が、雇用・政治、様々なところに女の生きづらさを作り出しています。だからこそ、男性中心の政治の世界の構成を変えなければ、女性が抱える問題は、これから先も後回しにされてしまうと思っています。

 

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大椿 ゆうこ(おおつばき・ゆうこ)
社会民主党、副党首
一九七三年岡山県生まれ。四国学院大学社会学部社会福祉学科卒業。社会福祉士、精神保健福祉士、保育士◎非正規労働を掛け持ちした後、関西学院大学に障がい学生支援コーディネーターとして有期雇用就職。現職復帰を求めた闘争をきっかけに、大阪教育合同労働組合の役員・専従職員・執行委員長として奮闘◎二〇一九年、参議院選挙に立候補するも落選◎社民党の全国連合常任幹事を経て、二一年副党首に。
全国連合労働・女性・多様性政策委員長、大阪九区国政政策委員長

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《『本当に野党ではダメなのか?』試し読み》
江田憲司「立憲民主党」代表代行に聞く
大門実紀史「日本共産党」参院国対副委員長に聞く
大塚耕平「国民民主党」代表代行に聞く

 


本当に野党ではダメなのか?——
野党が掲げる成長のための経済政策
及川健二 編 税込1650円


【目次】
■まえがき
経済政策担当の江田憲司「立憲民主党」代表代行に聞く
大門実紀史「日本共産党」参院国対副委員長に聞く
■藤田文武「日本維新の会」国会議員団広報局長に聞く
参議院国家基本政策委員会委員長の大塚耕平「国民民主党」代表代行に聞く
■非正規労働者出身、大椿ゆうこ「社会民主党」副党首に聞く
■元金融マン、北村イタル「れいわ新選組」衆議院東京都第二区総支部長に聞く
■浜田聡、旧「NHKから国民を守る党」政調会長に聞く
■落合貴之「立憲民主党」政調副会長に聞く
■浅田均「日本維新の会」政調会長に聞く
■政界を引退した亀井静香、元金融相に聞く
■今や国是となった積極財政。次なる論点はその金額だ。――池戸万作
■あとがき